注目ポイント
本日8月8日は台湾の「父の日」。アメリカに倣い、6月の第三日曜日を父の日にしている国が日本も含めて世界には多い中で、台湾独自の父の日の制定には歴史が深く関わっている。
歴史と深く関わる父の日
台湾で8月8日が父の日になったのは、数字の「8・8」という発音が、中国語でお父さんを意味する「爸爸」の発音と似ていることに由来するーーと、ここまでは一般的な台湾人や台湾好きな日本人ならご存知だろう。だが、台湾で独自に父の日が制定された背景には、単なる語呂合わせだけでない、複雑な台湾の歴史が横たわっている。
1937年7月、北京郊外で日本と中国の両軍が衝突した盧溝橋事件を機に日中戦争が勃発し、1941年には太平洋戦争に発展した。中国で抗日戦争と呼ばれた全面戦争は8年余におよび、1945年8月、日本の無条件降伏で終結したが、中国側の代償も大きく、日本軍の死者約41万人をはるかに上回る130万人余の軍人が亡くなり、民間人の死傷者は2,000万人以上といわれている。
その抗日戦争が終戦を迎える頃、上海の一部の人々が、父親を亡くした家庭が多いことや、父親にすらなれず若くして亡くなった男性たちを追悼しようと、8月8日を父の日に制定してはどうかと政府(当時は中華民国)に提案した。その後、中国共産党との内戦に破れた国民党政府が台湾に渡ると、8月8日が正式に父の日に制定された。戦後まもなく大陸から逃れてきた外省人の第一世代は今や年老いたが、実はその方々の苦労があってこその父の日なのである。
プレゼントを贈ることは稀
多くの企業が父の日にまつわるキャンペーンやプロモーションを展開している日本では、食べ物やお酒などをプレゼントして、日頃の労をねぎらう家庭が増えているだろう。花業界も父の日を盛り上げようと奮闘しているが、父の日のある6月は日本最大の花市場・大田市場の取扱数量と取引金額が1年を通して最も少なくなる月で、需要の少なさがうかがえる。
一方、台湾はどうかというと、プレゼントを贈る人自体があまり多くない。というのも、台湾でお祝い事といえば、プレゼントを贈るよりも一緒に食事をすることが一般的だからだ。台湾人の友人に聞いても、小さい頃から父の日にプレゼントを贈ったことはないと言う。ただ、夜ご飯は必ず一緒に食べるようにと昔から教育されていて、今でも習慣になっているそうだ。
花を贈るなら人気は蘭
それでも、父の日に花を贈る台湾人も一定数いる。母の日に比べれば圧倒的に少なく、筆者が経営する台北の花屋では母の日の注文数の2%にも満たない。市場の花の価格が高騰するわけでもないため、ほかの花屋も同じような状況だろう。
人気の花は鉢物の蘭だ。日本では初夏にちょうど良い向日葵や、梅雨時期に趣のある紫陽花が人気だが、台湾の父の日は夏真っ盛りで紫陽花は1週間と保たず、向日葵は品薄で、さらに卒業式の花というイメージが強いため選ばれにくい。