注目ポイント
バービー人形を初めて実写版化した米ワーナー・ブラザースの映画「バービー」が、中国で予想外の大ヒットとなっている。その理由は、この作品がフェミニズムや家父長制度、〝男らしさ〟という概念のもろさにスポットライトを当てていることに注目したフェミニストたちが、劇場に足を運んでいるからだという。
7月21日の公開から3週間目で、世界興行収入が10億ドル(約1420億円)を突破した米ワーナー・ブラザースの映画「バービー」(グレタ・ガーウィグ監督)。米国の文化的アイコンで、時代を超えて愛され続けるマテル社のバービー人形を初めて実写版化したこのラブコメディは、すでに世界中で2023年を代表する1本になっている。
だが、中国に関しては、冷戦後最も悪化したとされる米中関係や、米国を象徴するバービー人形に思い入れのある人は少ないとみて、興収も当初は期待されていなかった。ところが、いざふたを開けてみると、北米以外では英国、メキシコ、ブラジル、オーストラリアに次いで中国が世界で5番目のドル箱市場となっているというのだ。
米紙ニューヨーク・タイムズは6日、「なぜ『バービー』が中国でスリーパーヒットになっているか」という見出しで、その理由について分析した。スリーパーヒットとは、映画やドラマ、音楽などで、リリース当初はパッとしなかったものの、時を追って人気を集めるようになったヒット作のことだ。
北京の劇場に1人で足を運んだというミナ・リーさん(36)は同紙に、「中国には女性の自立を描いた映画や、フェミニズムの香りがする映画はあまりないから、数人の女性の友人から見る価値があるよと勧められた」と話した。
同紙によると、「バービー」は封切り初日、中国で同日上映さえた全スクリーンのわずか2.4%に過ぎなかったが、すぐに中国のソーシャルメディアで広く話題になり、一時は微博(ウェイボー)の検索ワードでトップになった。
また、同国の映画評価サイト「豆弁(ドウバン)」では10点満点の8.3という高評価を獲得し、現在上映中の他のどの映画よりも高い評価となっている。そのため劇場側は上映数の追加を競い合い、中国のチケット販売プラットフォーム「猫眼電影(ねこめでんえい)」によると、「バービー」の上映回数は公開初日の9673回から、1週間後には約3万6000回と約4倍に増えた。
「バービー」の中国での興行収入は5日時点で3010万ドル(約42億円)。これはトム・クルーズの最新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」より少ないが、ハリソン・フォードの「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」を超えているという。
近年は中国市場でのハリウッド映画の興収が減少傾向にある。原因の一つは、中国政府が上映を許可する外国映画の本数を制限しているからだとニューヨーク・タイムズ紙は指摘する。