注目ポイント
「私たちはこの島で、ずっとこれらの古く美しい大樹と暮らしてきたのです」と語るのは、「找樹的人――巨木地図プロジェクト」を主宰する徐嘉君だ。
理論上、タイワンスギは枝が少なく、葉は密ではないとされている。徐嘉君によると、倚天剣は下から見上げると一般の樹木と変わらないが、実際に登ってみると、どの枝も他の樹木の幹と同じぐらい太い。おそらく風を避けられる谷に生息し、水が豊富なため着生植物が茂っているからだと考えられる。

高々とそびえる神木
アメリカにある世界最高の樹木である「レッドウッド」(セコイアメスギ)を見に行ったことのある徐嘉君は、それは実に壮観だったと言う。「しかし台湾の巨木は雰囲気が違います。台湾は生態系が複雑で、着生植物や地表の植物の種類が多いので、生物多様性が高いのです」と言う。
倚天剣を見てみると、高さ50メートルの位置にようやく一本目の枝があり、樹冠層の横幅は34メートル近くある。これほど巨大な空間があると、着生植物は十分に生長でき、動物も活動できる。「これは私が見た中で最も密度の高い樹冠層です。緑花宝石蘭(Sunipia andersonii)がびっしりと覆い、十数種の着生生物の中には一般の杉ではあまり見られないナンカクランがあり、またリスやムササビが活動しています」と言う。
林務局は1998年に第3回全国森林資源調査を行ない、幹周りの寸法を基準に十大神木(巨木)ランキングを発表した。その第2位に選ばれたのは新中横公路にある鹿林神木だ。徐嘉君がこの木に登った時は、樹冠層に31種類の着生植物を記録した。高さ4メートルに達するニイタカトウヒや、小さな喬木と呼べる大きさでカエデの仲間の台湾紅榨槭(Acer morrisonense)や玉山假沙梨(Photinia niiitakayamensis)などが着生し、まるで空中庭園のようだったという。

宝くじに当たったようなもの
徐嘉君は、巨木は神木だと考えるが、それほど樹高も樹齢も高くなれたのは、その木が「宝くじに当たったようなもの」と言う。
まず、林務局の試算では台湾には約19億本の樹木があるが、その中で高さ70メートルに達する高樹となる機会は100万分の1に過ぎない。
次に、樹木の生理という面から見ると、これほど高い木となると根から吸い上げる水は行き渡らず、樹冠層では葉から吸収する水分が必要となる。例えば、台湾の巨木のホットスポットである雪山山脈の大安渓流域や、中部の丹大山地、南部の大鬼湖山地などは、いずれも風が避けられ、湿度が高い雲霧林という条件がそろっている。
また地質面では千年、万年の単位で見なければならない。例えば高さ79.1メートルの桃山神木がある場所は数千年前に崩落が生じて平らになった土地と推測され、厚い地層があるために巨木群が形成されている。渓谷にある神木軍は豪雨による土石流に流されやすく、いずれも雷にも打たれたことがあるため、厳しい環境にさらされ、生きているだけで奇跡だと言える。