2023-08-06 観光

天にとどく巨木の数々――神木の島 台湾

注目ポイント

「私たちはこの島で、ずっとこれらの古く美しい大樹と暮らしてきたのです」と語るのは、「找樹的人――巨木地図プロジェクト」を主宰する徐嘉君だ。

文・曾蘭淑 写真・莊坤儒 翻訳・山口 雪菜

夏至前のあたたかな日差しが注ぐ樹冠層から、チャバラオオルリの高いさえずりが聞こえてくる。頭を挙げて拉拉山神木園区に聳え立つ神木を見上げれば、思わず「ああ、高い!」という声が漏れる。

台湾は面積の60%を森林が多い、さらに3000メートルを超える峰が260を超える。それらの深山で数千年にわたって生きてきた巨木は、台湾の貴重な自然遺産と言える。

台湾は神木の宝庫

小雨が降る中、私たちは宜蘭県の福山植物園を訪れた。クスノキ科の大葉楠には十数種の着生植物がついていて「これは福山植物園の標準的な景観です」と、樹冠層の調査をしていた林業試験所アシスタント研究員の徐嘉君は言う。

樹林に深く入っていくと、上部が崩れ落ちている木や枯れてしまった木もある。「平和なように見える樹林ですが、実は黙々と戦いが繰り広げられています。特に幹囲20センチ以下の樹木の間では、陽光や水、空間を巡って激しく争っています」と徐嘉君は言い、「ですから樹冠層まで突き抜けた巨木は林の中の勝者なのです」と続ける。

「台湾の神木(巨木)は世界的に見ても特色があります」と徐嘉君は言う。人の手による過度の開発で、世界的に原生林が保存されている国は多くなく、未開発の到達しがたい地域に多い。ただ台湾は生活が便利なうえに原生林がよく保存されており、都市部から2~3日で原生林に深く入ることができる。例えば、世界で最も高いクスノキは台湾南投県信義郷の神木村にあり、また林務局が発表した十大神木の2位に挙げられる鹿林神木は阿里山公路(台湾18号線)の傍らにあって、容易に近づくことができる。

徐嘉君が言う「巨木」とは主に高さを基準とする。2016年に彼女は成功大学測量・空間情報学科の王驥魁教授と「巨木地図プロジェクト」を実施し、台湾で最も高い樹木を探した。

今年(2023年)1月には、徐嘉君は7日をかけて大安渓上流のタイワンスギを探しに行った。高さは84.1メートルで、現在台湾で最高、東アジアでも一番高く、「倚天剣」と名付けられた。

アメリカで、樹高60~70メートルのベイマツに登ったことのある徐嘉君によると、これほど高いベイマツも実は年老いていて、多くの枯れ枝や折れた枝があったが、倚天剣は健康そのものだという。

「倚天剣」はタイワンスギで学名にはTaiwaniaが冠されている。20世紀の初頭に植物学者が発見し、日本の学者・早田文蔵が正式に発表した。台湾大学森林学科を退官した蘇鴻傑・元教授によると、タイワンスギは古い地質時代の遺存種と考えられ、針葉樹の王者と言える。

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