注目ポイント
中国とロシアは、北朝鮮の「祖国解放戦争(朝鮮戦争)勝利70周年」(7月27日)を祝うイベントに代表団を送り込み、日米韓3カ国の結束に対抗するかのように中露朝の友好関係を誇示した。ただ、軍事パレードなどの一連の祝賀行事をつぶさに分析すると、中露朝は、米国を脅威とみなす点で共通するものの、対決姿勢を鮮明にする露朝に対し、関係改善を試みる中国が微妙に距離を置くという構図が浮き彫りになっている。
中国にとって、メンツを傷つけられる応対であり、習主席に対する侮辱でもある。

朝鮮戦争をともに戦った中朝は、かつては「血で固められた関係」と表現されるほど、親密だった。だが中国の存在感が国際社会で高まるにつれ、関係は複雑になり、中国が北朝鮮に自国のような改革・開放路線を促すたびに、北朝鮮は嫌悪感を抱いてきた。
北朝鮮にとって、中国との関係は自国の生存に不可欠だ。中国遼寧省丹東から北朝鮮平安北道新義州にパイプラインを通って送られる原油は、北朝鮮にとって命綱といえる。公式・非公式の貿易はどん底にある北朝鮮経済を下支えする。中国は対米けん制をバックアップする存在でもある。
だが、北朝鮮は中国による内政への干渉は極端に嫌う。北朝鮮がICBMを発射したり核実験を強行したりする時、「中国の許可を受けて」というようなことはない。あくまでも「マイウェイ」だ。
中国が北朝鮮の生死を握っているのは間違いない。パイプラインを停止すれば、北朝鮮国内は数カ月で動かなくなり、半年後には崩壊するという見方もある。だが北朝鮮が実際に崩壊すれば、中朝国境付近には想像を絶するような混乱が起きるだろう。その混乱は中国国内の安定に深刻な影響を及ぼす。朝鮮半島全体が米国の「支配地域」になる可能性もある。つまり中国は米国の「核」を喉元に突き付けられる形になる。北朝鮮の核はどう管理されるのだろうか……。
中国は北朝鮮に強い圧力をかけることはできず、北朝鮮もそれを熟知している。結局、現状維持こそが中国の利益である。だから中朝関係は常に曖昧だ。
「露朝密着」の演出
中朝関係とは異なり、露朝関係は1990年代の旧ソ連崩壊後、ほとんどの時期で緊密ではなかった。
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議が2000年代まで開かれていたころ、中国が議長国を務めて北朝鮮と日米韓の仲裁役を務めていたのに対し、ロシアの関与はほとんど目立たなかった。2010年代には断続的に首脳会談が開かれるなど関係修復が図られたものの、大きな成果はなかった。北朝鮮からみれば、ロシアの重要度は、中国の10分の1程度ではないか。
だが今回は、北朝鮮は中国よりもロシアを手厚くもてなした。
プーチン大統領が平壌に送ったのは、ショイグ氏率いる軍事代表団だ。ショイグ氏はプーチン大統領の「長年の腹心」と言われ、権力序列5位に入るとされる。
先月25日に平壌入りし、26日には北朝鮮の強純男(カン・スンナム)国防相と会談して、「両軍間の協力拡大や、地域・国際問題について意見交換し、完全な見解の一致をみた」(朝鮮中央通信)という。同日には党本部庁舎に招かれて金総書記と接見し、プーチン大統領からの「温かくて立派な親書」(同)を伝達している。この時、北朝鮮側は金総書記と通訳だけだった。