注目ポイント
米国で実施されたアジア系アメリカ人を対象にした意識調査で、中国の不人気ぶりが浮き彫りになった。アジア系アメリカ人はルーツである祖先の国について、おおむね好意的だが、中国に対して好意的と答えた中国系は約4割に留まった。また、非中国系のアジア系アメリカ人の中で、中国に対して好意的な印象を持っている人はわずか14%だった。
米ワシントンのシンクタンク「ピュー研究所」は2022年7月から23年1月まで、中国、インド、日本、韓国、フィリピン、台湾、ベトナムの7か国にルーツを持つ7000人以上のアメリカ人を対象に、祖先の祖国、自分たちのアイデンティティ、自国である米国、そして世界情勢についての意識調査を実施。米紙USAトゥデーは先週、その調査結果を報じた。
それによると、中国系とベトナム系は、祖先の国よりも他のアジアの国に好意を持っていることが判明。中国系は、台湾、韓国、日本を中国よりも肯定的に感じており、ベトナム系は日本に対してより好意的な見方を示した。
カリフォルニア大学リバーサイド校の政策研究所「AAPIデータ」のカーシック・ラマクリシュナン理事はUSAトゥデー紙に、「ある程度は驚くべきことではない」とし、アジア系アメリカ人の多数(60%近く)が外国生まれであると指摘。「権威主義的国家から来た人たちは、そういった理由があって国を去った訳だから」と述べた。
調査によると、中国系の41%が中国に対して好意的な印象を持ち、ベトナム系の約60%がベトナムについて肯定的に感じているとした。
サンフランシスコ州立大学のアジア系アメリカ人研究教授ラッセル・ジャン氏も同紙に、中国系の中国に対する見方には驚かなかったと述べた。「多くの移民は文化大革命や天安門事件の後に移住し、中国共産党政権から逃れてきた」と指摘。「香港の弾圧、中国国内の人権侵害、コロナ禍での中国の権威主義的対応を目の当たりにしたなら、批判的な立場に立つだろう」と続けた。
アメリカ人全体をみると、予想通り大多数が中国に対して否定的な見方をしている。
米オハイオ州のケース・ウェスタン・リザーブ大学でカトリック研究を専門とするジョナサン・タン教授は、中国系アメリカ人の中国に対する見方には宗教も影響しているという。中国系アメリカ人の約40%はキリスト教徒だという。
中国共産党がキリスト教を管理・規制しようとする中、タン氏は「これら中国系の多く、特にキリスト教徒は、現在の政治制度が続く限り、中国に戻ることに興味はない」と分析した。
一方、興味深いのはインド系アメリカ人の76%が自身や親たちの祖国に好意的なのに対し、他のアジア系の中でインドに対して肯定的だったのは、わずか23%だった。その否定的な傾向は特に中国系と韓国系で顕著だった。
逆に中国系の60%以上が台湾を好意的に見ていると答えており、USAトゥデー紙は「中国本土と台湾の間の緊張が高まっていることを考えると、この結果は注目に値する」と解説した。