2023-08-05 政治・国際

満100歳になったキッシンジャー元米国務長官を温かく迎える習近平氏。その背後にあるメッセージとは?

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注目ポイント

今年6月に習近平がブリンケン米国務長官と会談した際には、習近平がテーブルの先頭に座り、ブリンケンと米代表団はテーブルの両側で中国政府高官と対面して座っていた。しかし今回、習近平は小さなコーヒーテーブルで「中国の良き友人」キッシンジャー氏を温かく迎えた習近平氏と並んで座ることを選んだ。"中国人はこの種の会談の語り口やビジュアルを形作るのが非常にうまい "と専門家は言う。

 シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院の アルフレッド・ウー(呉木鑾)准教授は、習近平氏の会談は外部に向けてメッセージを発信する「目的」があったと指摘し、「発信されたメッセージは非常に明確だ。習近平氏は、中国側に立った発言をしたい親中派の人々と会うことを望んでいる」と話した。

ウー准教授は、習近平氏が今年6月にブリンケン米国務長官と会談した際、習近平氏はテーブルの上座に座り、ブリンケン氏と米国代表団はテーブルの両側で中国当局者と向かい合って座ったが、今回、習氏は小さなコーヒーテーブルでキッシンジャー氏と並んで座ることを選択し、雰囲気は更に和やかであったとも指摘した。

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r(図)習近平氏(中央)は今年6月、米国のブリンケン国務長官(左)一行と会談。

英BBCは、キッシンジャー氏が釣魚台国賓館で習近平氏に歓迎されたと伝えたが、この迎賓館は通常、外交官らの公式会議が開催される人民大会堂よりも人里離れた場所にある。そして専門家は、キッシンジャー氏の中国での地位から米中交渉の秘密ルートとして利用される可能性が高いと見ている。

 キッシンジャー氏は19日、今回の訪問は「中国の友人として来た」と述べ、今日の世界では課題と機会が共存しているが、「米中のどちらも相手をライバルとした時の代価を払うことはできず、両国に戦争が起これば、両国人民に意味のある結果は何ももたらさない」と強調した。

 キッシンジャー氏の訪問は、米国と中国が両国間の緊張緩和に努めていることを示しているとも言える。

 ブリンケン米国務長官は6月に訪中した際、習近平氏と会談し、ここ数週間ではイエレン財務長官も北京を訪問した。キッシンジャー氏の訪中と同時期にジョン・ケリー気候変動担当大統領特使も北京を訪問している。

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(図)ケリー気候変動担当大統領特使(左)が北京を訪問し、李強首相と会談。

米国務省のマシュー・ミラー報道官は、キッシンジャー氏が個人の立場で中国を訪問し、バイデン政権を代表したものではないと述べたが、「バイデン政権はキッシンジャー氏の訪中計画を承知している」とも強調した。

 

王毅氏:米国と中国には「キッシンジャー流の知恵」が必要 謝峰駐米大使「頼清徳氏の訪米阻止が最優先」と主張

 王毅氏は19日に北京でキッシンジャー氏と会談した際、「中国の発展には内側からの強い力と必然的な歴史的論理がある。中国を改革しようとするのは不可能であり、中国を包囲し封じ込めようとするのはさらに不可能だ」と述べ、「米国の対中政策には、キッシンジャー流の外交的知恵とニクソン元大統領の政治的勇気が必要だ」と語った。

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