注目ポイント
来年1月13日に投開票が予定されている台湾の総統選。いよいよ残り半年を切り、各陣営の動きも熱を帯びてきた。過去の総統選からは勝敗の大勢が夏に決したケースが少なくないことが読み取れる。最大野党の中国国民党は7月23日に党大会を開催し侯友宜氏を正式に公認候補として承認した。台湾の政治、選挙分析等に定評のある筆者が、与党・民主進歩党の頼清徳候補、第3勢力・台湾民衆党の柯文哲候補、そして侯友宜候補による3陣営入り乱れての「夏の陣」に注目した。

過去2回は8月で決まった
総統選の投票が1月に行なわれるようになったのは2012年からで、それ以前は3月であった。立法委員(国会議員)選挙と同日投票にするため総統選挙の投票時期を動かしたのだ。過去3回の選挙戦で「夏の陣」がどういう意味を持ったのかを振り返っておきたい。
2012年は再選を目指す国民党・馬英九氏と初挑戦の民進党・蔡英文氏が接戦を演じたが、夏場はまだ行方がわからず、秋も接戦が続き、12月になって馬英九氏がようやく蔡英文氏を突き放したという展開であった。
2016年は2回目の挑戦となった蔡英文氏が8月に国民党の洪秀柱氏に支持率で大差をつけ、ここで大勢が決まった。多くの人が蔡英文氏の圧勝を予想するようになり、国民党は10月になって候補者のすげ替えを迫られた。11月に馬英九-習近平会談という大きな仕掛けがあったが選挙情勢はまったく変わらなかった。
2020年は当初国民党の韓国瑜氏がリードしていたが,7月に蔡氏が韓氏に並び、追い越し、8月にはすべての民意調査で蔡氏が大きくリードする展開になった。この8月の攻防で勝負が決まり、蔡氏が大幅なリードを維持したまま投票日を迎えた。
このように過去2回は真夏の決戦で勝敗が決し、一旦固まった選挙情勢はその後4カ月間ほとんど変わらなかった。今回はどうなるであろうか?
7月の3候補の支持率
まず7月の3候補の支持率の趨勢を確認したい。使用したのはネットメディア・菱傳媒、シンクタンク・台湾民意基金会、ネットメディア・美麗島電子報、ケーブルテレビ・TVBSの民意(世論)調査で、6月と比較するためこの4社に限定した。3候補の支持率を平均すると、7月は,頼清徳氏35.8%、柯文哲氏28.0%、侯友宜氏21.6%であった。6月の平均値は、頼氏35.1%、柯氏30.5%、侯氏20.6%であった。6月の平均値と比較すると7月は、頼氏+0.7、柯氏-2.5、侯氏+1.0であった(図1参照)。4社以外にも多くの民意調査が出ているが、傾向はおおむね一致している。
図1 3候補の7月の支持率

支持率の趨勢
7月の3候補の支持率の趨勢について、頼清徳氏は安定して1位を維持、柯文哲氏は6月の上昇局面が頭打ちになり下がる傾向、侯友宜氏は下落に歯止めがかかったといえる。
頼氏の支持率はほとんど動いていない。これは民進党の支持基盤を固めて安定しているが、中間層への支持拡大は停滞していると見ることができる。細かく見れば、頼氏の2位に対するリード幅は6月の4.6ポイントから7月は7.7ポイントに広がった。頼氏は確かに選挙戦を有利に進めている。しかし、仮にこの先も伸び悩みが続く状態で野党統一候補が出現すれば脅威になるだろう。

© REUTERS