2023-08-02 経済

TSMC業績、世界的不況影響で二度目の下方修正で売上10%減。今後のAI特需に期待

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注目ポイント

世界最大の半導体ファウンドリ、台湾TSMC(台湾積体電路製造)は7月20日に第2四半期の決算説明会を開き、2023年第2四半期の財務報告を発表した。2022年同期と比較して売上高は10.0%減少し、粗利益率は54.1%、税引後純利益率は37.8%になった。 第 3 四半期の売上高は米ドルベースで6.5 ~ 11.6% 増加し、粗利益率は 51.5 ~ 53.5% になると推定されている。米国工場の生産計画は2025年まで延期されるが、日本については未定だという。

 世界的不況の影響を受け、売上高は前年同期比10%減

TSMCは7月20日、2023年第2四半期の財務報告を発表した。売上高は4,808億4,000万台湾ドル(約2兆1205億円)で前年同期比10.0%減、税引後純利益は1,818億台湾ドル(約8,017億円)で前期比12.17%減、前年同期比23.3%減、1株当たり利益(EPS)は7.01台湾ドル(約30.9円、米国委託証券の1単位あたり1.14台湾ドルに相当)となった。

今後の事業運営については、世界経済の回復が予想外に遅れており、下半期の予測は保留すると説明した。

今年第2四半期のTSMCの売上高は米国ドル換算で156億8,000万ドル、前年同期比13.7%減、前四半期比6.2%減、粗利益率は54.1%、営業利益率42.0%、税引後の純利益37.8%だった。 年間業績予想は2度目の下方修正となり、第3四半期の売上高は米ドル換算で6.5~11.6%増加、粗利益率が51.5~53.5%、税引後純利益率は38~40%になると予測している。

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(表)TSMC包括損益計算書

 製造分野別に見るとTSMCの主力製品である5nm半導体チップは第2四半期半導体チップ売上高全体の30%、7nm半導体チップは四半期全体の半導体チップの売上高全体の23%を占めた。全期間を総合し、先進半導体チップからの収益は同社半導体チップ売上の 53% を占めている。

 

TSMC: 3nm半導体チップは好調だが在庫調整で相殺

 TSMCの黄仁昭最高財務責任者(CFO)兼広報担当は「今年の第2四半期の収益は総体的に世界経済情勢の影響を受け、最終市場の需要が低迷し、顧客が在庫調整を続けている。第3四半期に入り3nm プロセスは順調に量産しているが、顧客の継続的な在庫調整により、部分的に相殺されるだろう」と見通しを述べた。

製品別業績を見ると、第2四半期に電化製品関連は前四半期比25%増加、車載電子製品関連は前四半期比3%増加、IoT製品関連は前四半期比11%減、スマートフォン関連は前四半期比9%減、HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)関連は前四半期比 5% 減であった。第3四半期の業績見通しについては、総売上高が165億~175億ドルになる見通しを示した。

TSMCの魏哲家最高経営責任者(CEO)は、喫緊の最も重要な課題は米国工場を中心とするコスト上昇で、現時点では15~20%に上昇すると予測されており、引き続き改善に努めると述べた。またTSMCは、主に12、16、22、28nmの半導体チップ製造を行う専門工場を日本に建設中で、2024年には量産が可能となり、更にヨーロッパでも「顧客やパートナーと協力して工場建設を計画中」と述べた。中国の南京でも28nmチップの生産を追加する計画が進行中だという。

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