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台風5号から変化した熱帯低気圧の影響で、中国では先月末から記録的な豪雨が続き、首都・北京ではここ10年間以上で最悪の洪水に見舞われた。中国当局は1日、北京市で11人、隣接する河北省で9人の計20人が死亡し、58万人以上が被災したことを明らかにした。習近平国家主席は行方不明者などの本格的捜索を指示し、軍も救援活動に乗り出した。
台風5号から変化した熱帯低気圧の影響で記録的な豪雨が続いた北京首都圏。市内各地で道路の冠水が発生し、山崩れが起きるなどの被害が拡大している。国営中央テレビ(CCTV)は1日、北京市と隣接する河北省でこれまで計20人の死亡を確認し、58万人以上が被災したと伝えた。
CCTVによると、習近平国家主席は本格的な捜索を指示し、軍も救援活動に乗り出した。
中央気象台は7月29日、北京市や河北省、天津市などに最高レベルの「豪雨赤色警報」を発出。2010年に色分けされた警報システムが導入されて以来、最高度の警報が発せられたのは2度目。この警報は首都圏近隣の山西省、山東省、河南省の一部も含み、住民数千万人が対象となった。
1日午前までの北京市の平均降水量は260ミリに上り、局地的な豪雨に見舞われた。北京の一部地域では、1時間あたり最大111ミリの降水量を観測。これは同市の7月の平均降水量170ミリの約65%が、わずか1時間で降った計算になる。
さらに29日夜から31日午後にかけて、北京では179ミリの総雨量が観測され、一部地域では584ミリという、1年間の平均降雨量(566ミリ)を超える記録的な雨が降った。
CCTVは、今回の豪雨で大きな被害を受けた北京西部・門頭溝区の住民たちに、軍用機が食料などの支援物資を届ける映像を放送。ソーシャルメディアに投稿された動画には、濁流で冠水し、川のようになった市街地の道路で車が流されたり、バスが半分水没した様子が撮られていた。
31日には北京市西部で山崩れが起き、多数の車両が流された。また配送業者の拠点で冠水により約80人が孤立し、当局が救助に当たった。豪雨の中、やはり北京西部に新設されたショッピングモールの外では、大規模な陥没穴が開いたが、原因はすぐには確認されなかった。市内各地では被害が拡大し、約12万7000人が避難を余儀なくされ、約4万5000人が被災した。
北京は2012年7月、記録が残る1951年以降、最悪の豪雨に見舞われ、79人が死亡した。この時は約16時間にわたり猛烈な雨が降り続け、総降雨量は約400ミリに達した。
その11年前の豪雨災害の経験から、当局は北京市内で危険性の高い地域から約3万1000人を避難させ、その他の地域の住民は自宅に留まるよう勧告した。紫禁城、万里の長城、ユニバーサルテーマパークなどの観光地は閉鎖され、北京の2つの主要空港では数十便が欠航となった。