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イタリアのクロセット国防相は、同国が2019年に西側主要国では唯一、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加したことについて、「行き当たりばったりでぞっとする決断だった」と当時の政権を批判。現政権は、対中関係を害することなく、いかに離脱するかを模索していると語った。
中国の習近平国家主席が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に、西側主要国としては唯一参加したイタリアが、離脱に向け動いている。
イタリアのクロセット国防相は7月30日付の地元紙コリエレ・デラ・セラとのインタビューで、当時の政権による「一帯一路」参加は「行き当たりばったりでぞっとする決断だった」と振り返り、批判。今の課題は、中国との関係を損なうことなく、いかに離脱するかだと述べた。
イタリアは2019年、当時のコンテ政権が「一帯一路」の協力文書に署名した。その結果、中国からの輸入は急増したものの、輸出促進にほとんど変化がなかったとクロセット氏は指摘。「一帯一路」の効果はみられなかったと結論付けた。
「一帯一路」計画では、陸路や航路などのインフラに莫大な額の支出を行い、アジアと欧州をつなぐ物流ルートをつくって、貿易を活発化させ、経済成長につなげようというもので、かつての交易路「シルクロード」の再建を目指すものだとしている。
だが、西側の批評家らはこれを、中国が地政学的・経済的影響力を拡大するための道具にすぎず、覇権のための壮大な構想の一環だとみている。
今年3月時点のデータによると、中国は2008年~21年、「一帯一路」の署名国の中で債務に苦しむ国への救済策として、総額2400億ドル(約34兆円)を支出している。ところが、経済支援を受ける開発途上国の多くは中国に対する借金が膨らみ、返済できなくなるという、いわゆる〝債務の罠〟に陥っている。
昨年10月に就任したメローニ首相の政権で国防相を務めるクロセット氏は、「現時点の課題は、(中国との)関係を損なうことなく、(一帯一路から)どう撤退するかだ。中国が競争相手であるのと同時にパートナーでもあるからだ」と説明した。
メローニ新政権の離脱の動きを中国は察知。イタリアを構想に引き止めるため、対外交流を担当する中央対外連絡部トップの劉建超部長が6月25日、イタリア北部ミラノで開かれた企業関係者との会議に出席した。中国側は、会議に出席したイタリア企業側から「一帯一路」への支持を取りつけたなどと主張。一方、イタリア側の関係者も、協力の継続を「断固として支持する」と明言したという。
一方、クロセット氏は、中国政府の「以前に増して独善的な態度」や、特にアフリカで、世界最大の軍事プレゼンスを目指すという野心に懸念を表明。「彼らは目標を隠さず、明確に示している」と強調。実際、ほぼ全てのアフリカの国々は「一帯一路」の協力文書に署名している。