注目ポイント
「美食天堂」(グルメ天国)の異名を持つ台湾。昨今ブームの「特製ラーメン」旋風もとどまるところを知らない。見た目の衝撃度でいえば前回紹介した「ゴジララーメン」を上回るのがこの「ダイオウグソクムシラーメン」だ。巨大なダンゴムシの仲間にしてナウシカの「王蟲」(オーム)のモデル…その味わいとはいかなるものか?台北市の遼寧夜市に近いラーメン店「拉麺公子」に、台北在住のライターが飛び込んで実食してみた。
「さながら甲冑」のカラがラーメン鉢のフタに
読者のみなさんは「ダイオウグソクムシ」(大王具足蟲)をご存知だろうか?
等脚目スナホリムシ科に属する海生甲殻類の一種である。等脚目にはダンゴムシやフナムシ、ワラジムシ等が含まれるが、「大王」の名の通り、これは等脚目として世界最大の種で、マンガ・アニメ作品「風の谷のナウシカ」に出てくる「王蟲」のモデルだという説もあるほどだ。

事実、体長は30センチ前後が普通で、大きい個体では50センチ近くになるものも。大西洋、太平洋、インド洋の深海に分布し、腐敗した魚の死がいを食べることから「深海の掃除屋」との異名も持つ。
日本では水族館で飼育するケースが散見されるが、ここ台湾ではその身をラーメンの具材とし、まさしく具足(ヨロイ、甲冑)のように立派なそのカラを、ラーメン鉢のフタにドカン!と乗せてしまった、というウワサを聞き、カメラを片手に「拉麺公子」(台北市八徳路二段279号)へと馳せ参じた。
日本円約6500円の高級メニュー
「今回仕入れたダイオウグソクムシは10匹。でもたった1日で売り切れですよ。まさに秒殺でした」とうれしい悲鳴をあげるのは、「拉麺公子」を経営するオーナーの胡さんだ。(フルネームは「ナイショ」だってさ)

3年前に鶏ガラや海鮮系の塩味スープを売り物に始めたこのラーメン店では、ときおり凝った具の麺を出すようになっていたが、台湾本島南西約410キロ、香港南東約340キロの南シナ海に浮かぶ東沙諸島。その近辺で捕獲されるこのダイオウグソクムシが入手できるルートができたので、それを大胆にラーメンの具材に生かすことを思いついたという。
象徴的なカラはラーメン鉢のフタにして売り出せば、SNSが盛んな台湾で「映える」新メニューとして認知されることを、計算高くも意識した、というワケだ。
ただし胡さんの名誉ために断っておくが、この店は、ダイオウグソクムシラーメンのような特別メニューではなく、ごく普通のメニューを目当てに客が行列をなす人気店だ。店先で普通のお客さんらと一緒に30分ほど行列した後、ようやく発券機の前に立った。

そこには白い殻に覆われたダイオウグソクムシの写真の下に「夢寐以求的夢幻食材」(夢にまで見る幻の食材)「大王具足蟲拉麺 1180元」とある。これに濃厚煮干スープ300元を合わせ占めて1480元(約6500円)と、なかなかいいお値段である。
エイヤッ!とボタンを押して発券し、注文した後、ダイオウグソクムシとご対面の前の10分間ほど、隣で麺を食べていたカップルに「拉麺公子」の魅力について聞いてみた。「オープン以来毎週食べにきます。偶然近くを通りかかって見つけた店ですが、スープの味がよいし、具材にもこだわりがあるので、行列しても食べたいです」と、非常に熱心な常連客なのであった。
