2023-07-27 政治・国際

習政権、動静不明だった秦剛外相を解任 突然消息を絶った中国要人たちのその後

© Photo Credit: GettyImages 秦剛外相

注目ポイント

このひと月、動静不明だった中国の秦剛外相が解任された。外相という要職を就任からわずか半年余りで交代させるのは極めて異例で、香港の女性テレビ司会者との関係が理由との憶測が広まった。共産党内のライバルが、不倫騒動を利用して秦氏の失脚を図ったという陰謀論も浮上するなか、中国では過去にも突然姿を消した要人たちが多く存在した。

中国の全国人民代表大会の常務委員会は25日、動静不明が続いてきた秦剛外相を解任する人事を決めたと国営・新華社が伝えた。外相という要職を就任から半年余りで交代させるのは極めて異例。同常務委員会は後任に前外相の王毅共産党政治局員を充てる人事を決定した。

秦氏は2022年12月に外相に就任。新華社は解任理由や、兼務していた国務委員も解任されたかは伝えていない。昨年秋に3期目の指導部人事を腹心で固め、秦氏を重用した習近平国家主席には大きな痛手となった。

秦氏は今年6月25日に北京でロシアを含む3か国の高官と会談したのを最後に、公の場に姿を見せなくなった。中国外務省は7月11日の記者会見で、健康上の理由から秦氏は7月中旬のインドネシアでの国際会議を欠席すると説明。これと前後して、新型コロナウイルスに感染したとの報道や、女性問題で調査を受けているとの情報が伝えられた。

英BBCによると、秦氏と2人で撮られた画像や動画がソーシャルメディアで拡散し、不倫相手とうわさされた香港のテレビ司会者の女性も、その後「消息不明」となり、中国共産党内のライバルが、不倫騒動を利用して秦氏の失脚を図ったという陰謀論も浮上している。

一方で、重大な健康上の緊急事態が原因となった可能性も否定できないが、「中国共産党の統治は極めて不透明であるため、こうした可能性はどれも確認も否定もできない」とBBCは伝えた。

秦氏のように突如、公の場から一時姿を消した中国のエリートたちは少なくない。英紙ガーディアンは近年の例を紹介した。

胡錦濤

最近、そして最も公になった高官の失脚は、習氏の前任者で、中国で最も権力のある中国共産党総書記を務めた胡錦濤氏の失脚だった。昨年10月の第20回党大会の閉会式で、胡氏は大会の様子を報じる記者たちの目の前で人民大会堂から連れ出された。

公式説明によれば、胡氏は突然の体調不良に見舞われたという。会場にいた多く者たちは、本当の理由は政治的なものではないかと疑っていた。だがその後の12月、胡氏は江沢民元国家主席の葬儀に現れ、完全には粛清されていないことが明らかになった。

馬雲(ジャック・マー)

2020年11月、中国財界で最も成功した億万長者ジャック・マー氏は突然行方不明になった。電子商取引事業アリババの創設者は、その数週間前に中国の金融規制当局を批判する講演を行っていた。直後、マー氏は当局に出頭するよう命じられ、予定していたアリババのフィンテック(金融サービス&情報技術)部門であるアントグループのIPOは中止された。マー氏は3か月後に再び姿を現したが、以前の覇気は消え、それ以来目立った発言はしなくなった。

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