注目ポイント
リトアニア共和国で7月11日から12日まで、NATO(北大西洋条約機構)首脳会議が開催された。議題の中心はウクライナ問題とスウェーデンの加盟問題だったが「中国の脅威」についても、無視出来ない重要な問題として焦点が当てられた。NATO は中国の脅威を牽制するために、アジア太平洋地域へ徐々に勢力を拡大している。
今回のNATO首脳会議の内容をまとめたコミュニケ(声明)は、中国について15回も言及し「中国の野心と強圧的な政策は、我々の安全保障と利益、価値に挑戦するものだ」と指摘した。
「NATO同盟国は引き続き中国からのサイバー、宇宙、ハイブリッド、そのほかの非対称的な脅威、そして新興のテクノロジーや破壊的なテクノロジーの悪意のある使用による脅威に直面している」「アジア太平洋のパートナーとの対話と協力を強化する」と強調した。
NATOコミュニケに対し中国は「冷戦時代の思考とイデオロギー的偏見に満ちている」「中国はNATOのアジア太平洋地域への勢力拡大に断固として反対する」と強く批判した。
アジア太平洋地域への勢力拡大を目指すNATOは「究極の愚か者」か?
リトアニア共和国の首都ビリニュスで開かれた今年のNATO首脳会議には、NATO非加盟国である日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドのインド太平洋地域4カ国の首脳も出席した。
昨年スペインの首都マドリードで行われた首脳会議に続き、2年連続となる。北米と欧州を中心としたNATOの首脳会議に4カ国の首脳が続けて出席している理由について、オーストラリアのオンラインメディア「ザ・カンバセーション」(The Conversation)は、これらの国々は、ウクライナを支援し、ロシアを制裁している国際連合の最も重要なメンバーだからだと報道した。

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「ザ・カンバセーション」によると、インド太平洋地域はNATOが昨年出した「戦略概念2022」において重要な位置を占めている。この文書では、中国の野心と強圧的な政策はNATOの安全保障と利益、価値に挑戦するものだと初めて言及した。
特に中国とロシアが協力関係を深めていることについて「NATOは確立された国際秩序に対する脅威とみなしている」と非難した。さらに、インド太平洋地域について「NATOにとって重要な地域であり、この地域の発展が欧州、大西洋の安全に直接影響を与える」と述べている。
このため、NATOはインド太平洋地域における既存のパートナーシップを強化する必要があり、これによってオーストラリア、英国、米国の3カ国による軍事パートナーシップ (AUKUS) や 日米豪印戦略対話 (QUAD) を補完するものと見られている。
しかし、インド太平洋地域への勢力拡大を目指すNATOの試みはまだ初期段階にあり、一部では反対の声も上がっている。