2023-07-26 政治・国際

命の危険及ぼす熱波は毎年の〝日常〟になる  気候危機がもたらす将来の地球を英紙が解説

© GettyImages  Tourists are refreshed by a fan spraying nebulized water in Rome, Italy.

注目ポイント

地球温暖化による極端な異常気象でこの夏、欧州や北米、アジアでは命に危険が及ぶ高温が続いている。英紙ガーディアンは、この気候危機がもたらす人々への影響や今後、どのように気温が上昇していくのかを解説した。

熱波が北半球を覆っている。欧州では強風と酷暑に見舞われたギリシャで山火事が発生し全土に広がり、ロードス島から先週末に約1万9000人が避難。熱波のため最高気温が45度を超えたイタリア南部シチリア島でも24日、山火事が発生、パレルモの空港が25日、一時閉鎖となった。パレルモ周辺では約1500人が避難した。また、イタリア・サルデーニャ島では24日、欧州の観測史上最高気温となる摂氏50度の予報が出た。

ギリシャのミツォタキス首相は24日の議会で、「これは戦争だ」とし、「気候危機が既に到来した」と深刻な懸念を表明。極端な異常気象が南欧を始め、北米や中国でも記録的な暑さが伝えられる中、英紙ガ―ディアンは地球温暖化による気候危機について解説した。

同紙は「熱はサイレントキラー」と表現。専門家によると、暑すぎると心臓の鼓動は速くなり、血液の循環や臓器の機能が低下し始める。ストレスが体を圧倒し、体を冷却することが困難になる。通常(37℃)の深部体温は発熱(38℃)、そして致死的(40℃)にまで上昇する。

ガーディアン紙によると、農業従事者や建設業者からホームレスに至るまで、多くの時間を屋外で過ごす人たちが熱中症により死亡する例は少なくない。だが実際は、猛暑で悪化した心臓、肺、腎臓などの病気により、それよりはるかに多くの命が奪われている。研究によると、昨夏の欧州の暑さによる死者数は6万1672人に上った。

日中屋内にいれば安全か?

日中の記録的な最高気温に注目が集まるが、被害が最も大きいのは熱帯夜だ。体を冷やすことができず、臓器がストレス下で過ごす時間が長引き、なかなか眠れず、重要な回復時間が短縮される。

暑い夜と睡眠の質の悪さは誰にとっても不快なものだが、一部の人にとってそれは致命的だ。研究によると、酷暑による睡眠不足で最も深刻な打撃を与えられるのは高齢者と女性で、猛暑の中で死亡率が最も高いのも同じグループ。熱帯夜は暑さによる死亡率の高さと関連している。

欧州と北米で起きている現在の熱波は気候変動と関係があるのか?

化石燃料を燃焼させ、自然を破壊することにより、人類は地球の平均気温を産業革命前より1.2度上昇させた。そのため、地球上のほぼすべての場所で平均気温が上昇し、熱波がより高温になり、かつ発生しやすくなった。

欧州はここ数十年で急速に暑くなった

複数の研究結果は、欧州と北米の気象パターンを決定する高速で動く空気の流れであるジェット気流が、地球の温暖化に伴って不安定になっていることを示唆している。 欧州と北米の一部地域では、ジェット気流の曲がりによって高気圧が温かい空気に〝ふた〟をした状態で停滞する「ヒートドーム」現象が発生している。だが、専門家らは、気候変動が状況を悪化させているかどうかを判断するのは、時期尚早だとしている。

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