注目ポイント
台湾の店舗経営者にとって、店舗移転に関する知識や法律関係の情報収集は必須のスキル。台北で花屋を営む日本人経営者の坂木龍太郎氏は、特に優良物件が限られている台北では、不測の事態が生じても即座に移転対応できるように、日頃からの準備の大切さを訴える。台湾で店舗を運営したり、立ち上げを考えているのなら覚悟しておきたいトラブルを避けるためにするべきこととは?
不動産会社は味方になってくれない
筆者は台北で花屋を経営していて、今までに2回店舗を移転した経験がある。1回目の移転は、大家の投資の失敗による物件差し押さえという突然の出来事によるもの。幸い、開店して間もない頃は資金もなく、内装にお金をかける余裕もなかったので、現状復帰義務も簡単な清掃程度で済んだ。
2回目の移転は、エアコンの故障が原因だった。台湾では通常、店舗に備え付けのエアコンは大家の持ち物で、トラブルがあれば大家が修理費用を全額支払う義務がある。だが、その大家はこちらに全額負担しろと言ってきた。花屋という職業柄、猛暑の台湾では店内の温度設定が花の命、鮮度を大きく左右する。そのためエアコンの故障は一大事なのだが、大家は一向に修理する気がなく、仕方なしに全額負担して最低限の修理をした。最低限といっても、業務用エアコンの修理は高額だ。その後も、法律と契約に則って修理費用を請求したが一切支払う気がないため、移転を決意した。
このように、台湾で店舗を経営していると、不測の事態によく遭遇する。日本のように不動産会社が店舗側の味方になってくれることも少ない。特に台北の大家たちは本業で大金を稼いでいる富裕層だから、不動産会社としても、1店舗のオーナーを助けるよりも富裕層との関係を長く続けたいと思うのは当然だろう。台湾で店舗を守っていくためには、何が起きてもいち早く動けるように、自分自身で事前に情報を集め、資金の準備をしておくことが重要だと身をもって実感した。
事前調査に即決、即行動が優良物件と出合う鍵
いざ店舗の移転となっても、台北で優良な空き物件にすぐ出合えるわけではない。大抵の優良物件は「591(台湾最大の不動産サイト)」やFacebookに情報が出る前に、次の借主が決まってしまうからだ。
では、どうやって探すのか。まずはターゲットとなるエリアを絞ることである。MRT(台北メトロ)の主要駅を狙うのか、主要駅から少し離れた住宅街を狙うのか、業種によってターゲットは異なる。各駅の乗降者数、家賃相場、街の雰囲気などから当たりを付け、自分でその周辺を歩いてみることが重要だ。
シャッターがずっと閉まっている店や、電気の点いていない店はチャンスだ。長期間営業していない店や潰れそうな店は、不動産会社に依頼せずに大家が放置している場合もあるため、良さそうな物件があれば、近隣の店舗の経営者らに話を聞いて、空き物件か、空きそうな物件かを確認する。また、手書きの張り紙で借主を募集している店もおすすめである。そういった店を見つけたらすぐに電話して、家賃や契約情報を確認すると良いだろう。