注目ポイント
2011年に発生した日本の福島第一原子力発電所事故以来、世界中で反原発の声が高まっている。最新版である 2022年報告書によれば、原子力発電は減少傾向にあるが、中国など一部の国では依然として原子炉の建設が活発に行われている。 しかし、戦争や気候変動に直面しているにもかかわらず、なぜこれほどまでに原発擁護論が復活しているだろうか。小型モジュール炉(SMR)は本当に実現可能なのか。
「世界原子力産業現状報告書(WNISR)」2022年版によると、原子力発電の世界シェアは、過去40年間で最低の9.8%まで低下した。2002年から2021年までに世界で合計98基の原子炉が稼働中であり、105基が停止する計画だが、稼働している原子炉のほとんどが中国にあり、中国以外の国では57基の原子炉が純減しており、世界的に原子力発電が減少傾向にあることを示している。
国際原子力機関(IAEA)の統計によると、米国は依然として世界で最も多くの原子炉を保有しているが、その発電量は2019年のピーク時に比べて3.9%減少した。2位の中国は、全体の原子力発電量が前年に比べて11%増加し、口内の53基の原子炉に加えて、現在も20基の原子炉が建設中であり、世界で最も原子力発電所建設が盛んな国となっている。

台湾で稼働中の原子力発電所は、第二原子力発電所と第三原子力発電所であり、2022年には台湾の総発電量の約9.1%を占めている。2016年に政府が掲げた「非核家園(=原発がないふるさと)」プランでは、残りの稼働中の原子力発電所は2025年までに停止する予定で、台湾政府にとってエネルギー転換と電力業界改革が最重要課題となっている。
世界の主要国の電源シェアを見ると、原子力発電への依存度が高いフランスを除けば、ほとんどの国が依然として伝統的なエネルギー源を主な発電源としていることがわかる。中国は世界で2番目に原子炉の数が多い国だが、それでも全電力消費量に占める原子力の割合は5%未満である。

2011年の日本の福島原発事故後、世界的に反原発が叫ばれたにもかかわらず、ロシアとウクライナの戦争や気候変動による異常気象が電力の安定的な供給へのリスク要因となり、多くの国で原子力発電への支持が再び高まっている。
日本政府は2月、原発の運転期間を60年以上延長するなどのエネルギー関連法改正案を可決した。フランスのマクロン大統領も、石油化学産業への依存を減らし、2050年までにカーボンニュートラルを達成するため、原子力産業を復活させ、約14基の原子炉の建設に着手すると発表した。
しかし、『世界原子力産業現状報告書』では、ロシア・ウクライナ戦争の勃発が戦時下において原子力発電所が直面しうる複数の間接的脅威を浮き彫りにしたと主張する専門家もいる。 軍事的理由があるかどうかにかかわらず占拠、奪還、或いは焦土化政策によって原子力発電所の敷地を破壊するなど、戦争中は原子力発電所の安全性に影響を及ぼす様々な予期しない要因が存在する。
フォックスコン創始者の郭台銘氏が最近言及した台湾の県や市における小型モジュール炉(SMR)建設もまた台湾で熱い話題となっている。 台湾電力の公式サイトによると、原子力業界は1990年代からSMRのコンセプトを語っており、SMRはモジュール設計で、工場で大量生産したものをモジュール化して立地サイトへ搬送、プレハブのように現地で組み立てることができ、1基の原子炉で6000万ワットの発電が可能で、4万世帯の電力需要を賄うことができるという。
しかし、2022年版『世界原子力産業現状報告書』チームは、この技術は過去数年間大きな進歩はなく、長期的な遅れと高いコストに直面していると指摘している。
出典:国際原子力機関(IAEA),『World Nuclear Industry Status Report 2022』