注目ポイント
中国の経済成長が鈍化する中、共産党と政府は民間企業のビジネス環境を改善するなど活性化策を打ち出しているものの、専門家はその効果に懐疑的だ。また、外資の参入を渇望する各都市は、西側企業から投資を引き出すのに躍起となる一方、習近平政権の安全保障政策が外資の対中投資を妨げるという矛盾を引き起こしている。
中国共産党中央委員会と政府・国務院は19日、共同で民間の経済活性化策を発表。政府は民間企業を国営企業と同等に扱うことを決め、行政は政策立案に起業家の声を積極的に取り入れるなどとしている。
米ブルームバーグ・ニュースによると、中国は今月、アリババグループの金融関連会社アントグループと広東省深圳市に本拠を置くテンセント・ホールディングスに10億ドル(約1398億円)を超える罰金を課すなど、ハイテク企業を対象にしたここ数年の取り締まりを終え、民間セクター寄りの姿勢に転じた。
習近平国家主席の下で進化する共産党の姿勢は、世界市場で注目されているものの、一部の専門家は拡大する中国のインターネット産業は投資不可能だと指摘。政府の活性化策は中国の民間企業には歓迎されるだろうが、テクノロジーからオンライン教育、不動産に至るまで、あらゆるものに対する規制はそれほど大きな政策転換を示すものではないとみている。
ロンドンのキングス・カレッジで中国・東アジアビジネスのシン・スン上級講師は、「民間に対する厳しい政治・ビジネス環境が、いくつかのガイドラインによって一夜にして変わるとは思えない」と指摘。これまでの動きと同様、これらは一般原則であり、「すぐに実現できる具体的な措置が欠けている」と述べた。
さらに、金利引き下げ、クレジットカード取得の容易化、瀕死の住宅市場を活性化させるための一連の措置など、成長回復への中国政府の取り組みは、コロナ禍で壊滅的なダメージを受けた経済の下支えをするのにほとんど役立っていない。
ブルームバーグによると、中国の景気回復は第2四半期に勢いを失い、前年同期比でわずか1%弱の拡大に終わり、政府の5%成長目標が危機にさらされ、複数のエコノミストが今年の見通しを下方修正することになった。
そんな中、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、中国の各都市は西側企業から投資を引き出すのに躍起となる中、習氏の外資締め付けが矛盾を招いていると報じた。
中国政府は今年を「中国(への)投資年」と位置づけ、海外からの投資をのどから手が出るほど欲しい地方当局者は、外国に出向いて投資家の関心を喚起するツアーを始めた。ところが、「外国から脅威とみなすものを排除すること」を重視する習氏の国家安全保障政策がこうした動きを妨げているという。
WSJ紙は、「今年始まった習氏主導のキャンペーンでは、経営コンサルタントや監査法人など西側企業が相次いで家宅捜索や調査の対象となり、関係者が拘束された。一方、反スパイ法の改正を受け、外国企業の幹部の間では、市場調査のような通常の企業活動がスパイ行為と解釈されるかもしれないとの懸念が強まっている」とし、「外国企業にとって対中投資はいまや潜在的な地雷原と化している」と伝えた。