注目ポイント
かつてオランダ人は「世界は神が創ったが、オランダ(の大地)はオランダ人が造った」と誇らしげに語ったものだ。しかし21世紀に入ると、オランダ政府は「土地を河川に返す」ことを決めた。数世紀にわたって農地や居住地として利用してきた川沿いの土地を河川に返し、川の空間を拡張し、従来の遊水地や調節池としての機能を回復させようという考えである。
台北市のMRT象山駅から徒歩20分ほど行くと、景色の中に緑が増えていき、豹山、象山、虎山、獅山という「四獣山」に囲まれた「永春陂湿地公園」に到着する。
「永春陂」は四獣山の下に広がる天然のくぼ地で、かつては灌漑のための溜め池として用いられていた。戦後になると軍用地とされてコンクリートに覆われていたが、軍が転出した後、ここが洪水時に水を貯め、生態を保全する湿地公園へと生まれ変わったのである。ここは台北市内の都市型湿地生態環境整備の最初のケースで、2020年の第8回台湾景観大賞の年度大賞と、IFLA(国際造園家連盟)が主催する2020年のAAPME賞を受賞するなど、高く評価されている。
経典工程コンサルティングの責任者である劉柏宏は、この湿地公園には二つの目的があると語る。一つは四獣山の生態系を湿地にまで広げること、もう一つは公園に対する市民のニーズを満たすことである。そこで劉柏宏は湿地公園を3つのエリアに分けた。北側は人間が活動するエリア、南側は四獣山に近い生物保護エリア、中間は緩衝区である。
「台湾の河川は短く、流れが急なので、山のふもとには雨水を貯める環境設計が必要です」と言う。永春陂湿地公園では、大地を覆っていたコンクリートを取り除き、それを埋めて高低差のある土地にし、豹山渓の水を引き入れた。こうすることで、洪水防止の効果が得られることが計算上でも分かっている。大雨が降った時、公園は水を貯める機能を発揮することとなる。永春陂湿地公園の緑地と水域の面積は全体の86.3%を占め、保水量は4893.32立方メートル、瞬間豪雨の雨水を8.77時間保つことができる。
劉柏宏は、もう一つのモデルケースとして内湖テクノロジーパーク内にある大港墘公園を挙げる。ここはかつて台北生花市場だった場所で、移転後には広大なコンクリートの敷地が残された。周囲にはオフィスビルが林立している。「この地域には天然の水源はありません。そこでレジリエンスのために貯水の機能を持たせました」と劉柏宏は言う。永春陂と同じように建材廃棄物を埋めて高低差のある土地にし、完全な排水と保水のシステムを整備した。公園の草地の下には2900トンの水を蓄えられる設備があり、それにより地表の保水指標の6倍の水が貯められる。「地表を流れる雨水を分担するという法規に照らすと、その規定の6倍の水が貯められ、この土地の分だけでなく、周辺地域の洪水防止のニーズも満たせるのです」と言う。
