2023-07-21 経済

日本-台湾路線「需要はあるのに機材と人員が追い付かない」と焦る航空業界

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注目ポイント

新型コロナウイルスの感染拡大による規制も緩和され、日常生活に「旅行」が戻ってきた。旅行社が集計した今年夏休みの海外・国内旅行の「人気旅行先ランキング」によると、海外では台湾が堂々の1位に輝いている。逆も同じで台湾観光協会の調べでは、今年1月と2月で台湾から出境した人は約150万人。このうち50万人が日本を訪れたという。台湾の旅行代理店では「一気に日本と台湾の往来が戻ってきた。航空需要は非常に高い」と期待をふくらませるものの、「肝心の機材や人員がそれに追いつかない」と浮かない顔だ。

台湾の場合は更に特殊で、この間にスターラックス航空が新規参入した影響もあって、ただでさえ少ないパイロットや機材の確保がより熾烈になってしまったという事情もあげられる。

スターラックス航空は、エバー航空の親会社、長栄グループの創立者、張栄発氏の四男、張國煒氏が2018年に起業した。張國煒氏はエバー航空時代にはパイロットの資格も有し、自らが操縦することもあり、退任時は長栄グループのトップの座にあった。

張栄発氏死亡後のお家騒動で、エバー航空から追い出されたかっこうの張國煒氏が設立したのがスターラックス航空だ。

範にとったのが、アラブ首長国連邦、ドバイを拠点にしているエミレーツ航空で、最新の機材、優れたサービスなどで世界の航空業界を席巻している。

スターラックス航空は「アジアのエミレーツ航空」を合言葉に急速に力を伸ばしており、日本では東京、大阪、福岡、沖縄、仙台、札幌と6都市に就航。海外でもシンガポール、タイ、フィリピン、ベトナムの東南アジア諸国から、米国・ロサンゼルス路線も開設している。

SNS上でもスターラックス航空についての高評価は散見される。

「機材が新しいこともあり、とても綺麗で清潔感がありました。モニター画面も大きく、操作も滑らかでした」

「さすがは元BR会長が興したキャリアだけあって新規就航ながらマーケティングもしっかり行われているという印象を強く受けました。

LCCではない、ラグジュアリー路線でいくことをコンセプトとしていますので、プロダクト(ハード)だけでなくサービス(ソフト)面もなかなかレベルの高いものでした」

といった具合だ。

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張國煒氏が2018年に設立したスターラックス航空

 

引く手あまたの日本便「就航させたいが…」

しかし、日本の地方自治体関係者が台湾の航空会社に「ぜひウチの地方空港に定期便を就航してほしい」と熱心に営業にまわっても、台湾のある航空会社幹部は、「エバー航空とスターラックス航空、元は同じ会社のようなもの。ここで熾烈な人材の引き抜き合戦があり、他の航空会社にも飛び火したため、台湾の航空業界は特にパイロットが不足している。日本の地方都市に就航させたい気持ちはやまやまであっても、今は物理的に難しい」と嘆いていたという。

とはいえ、その一方では営業の粘りによって台湾便就航を勝ち取った地方都市もある。

実際に営業を行うために台湾で航空会社を行脚してまわった地方都市の職員は、「地方都市で台湾や韓国などの就航が実現しているところは、たいていが搭乗率保証制度で一定の保証をしている」と打ち明ける。

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