2023-07-18 テクノロジー

米国が対中半導体輸出規制強化 中国の地下市場でNVIDIAのAIチップA100やH100の価格が2倍に高騰

© Photo Credit: Shutterstock

注目ポイント

米国が対中半導体輸出規制を強化する中、中国はAI(人工知能)分野の発展を加速するため、テンセント、アリババ、バイドゥ、バイトダンス等テクノロジー企業は米国の半導体メーカーNVIDIA(エヌビディア)から、異例ともいえる大量の半導体チップ発注を行った。

米国は先端半導体を中心に対中輸出の規制範囲を拡大するだけでなく、中国企業が規制回避のためにクラウドコンピューティングを使用することも禁止している。 中国も対抗して、米国の半導体メモリー大手マイクロン(Micron)に対して調査を実施、同社からのガリウムとゲルマニウムの調達禁止を発表した。これらの規制の影響を受け、NVIDIAの主要製品であるA100の価格が中国の地下市場で高騰している。

 

NVIDIAのAIチップ価格が中国の地下市場で高騰

 NVDIA はGPU(グラフィックス プロセッシング ユニット: 画像処理に特化したプロセッサー)のトップメーカーで、AI 分野で重要な役割を果たしている。 AI コンピューティングの需要が高まる中、GPU は大量、高速の計算処理が可能であるり、NVDIA の GPU技術はディープラーニングの学習と実行に広く使用され、AI コンピューティングの筆頭的存在となっている。

また、NVDIAが開発したCUDA (Compute Unified Device Architecture:クーダ)  は、GPU向けの汎用並列コンピューティングプラットフォームとして、世界で最も多く使用されている。更にはAI モデルの開発プロセスを簡素化する、cuDNN や TensorRT 等、ディープラーニングを最適化するためのソフトウェア データベースも提供している。

「ロイター」の報道によると、米国の対中半導体輸出規制が広がる中、中国広東省深圳にある世界最大規模の電子街、華強北では、NVDIA のA100やH100等のAIチップが地下市場に出回り、高性能のA100チップは一般価格の2倍に当たる2万ドル(約284万円)前後で取引されているという。

米国ジェフリーズ証券の株式戦略グローバルヘッド、クリストファー・ウッド氏は、米国の輸出規制が長引けば、中国企業によるチップを買い占めは益々増えるだろうと分析した。

対中輸出規制は主に先端半導体を対象としているため、NVDIAは中国市場での減収を軽減するために半導体チップのモデルチェンジにより性能を下げる戦略を選んだ。カスタムメイドチップA800を中国市場に投入し、過去数ヶ月中国市場で販売実績を上げているが、規制回避のため更にH100を設計し、販売を開始した。

 

テンセント、アリババ、バイドゥが半導体チップを緊急発注

 米国は規制強化を進めているが 、中国のAI産業の勢いを完全に止めることは難しい。 「フィナンシャル・タイムズ」の報道によると、米国商務省は2022年10月に出された包括的な輸出管理政策を更新する準備を進めており、NVDIAやAMD(Advanced Micro Devices)等の企業が中国の企業に最新の高性能チップを販売することがより困難になる可能性がある。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい