2023-07-20 流台湾

先生と親のLINE交換は当たり前。台湾の卒園式から見る文化の違い

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注目ポイント

台湾は卒業シーズン真っ只中。6月は小中高や大学で卒業式が、7月は幼稚園で卒園式が行われることが多く、花屋にとっては忙しい日々が続く。日本と異なるのが、台湾では園児や生徒から先生へ、ときには保護者から先生へ花や贈り物をプレゼントすること。保護者と先生の距離も日本以上に近いが、先生という職業へのリスペクトも日本以上のようだ。

花というのは人々の記憶の中に深く残り、嬉しいことや悲しいこと、その時の情景をふと思い出させてくれる。私はチューリップを見かけると、日本の花屋時代を思い出す。日本で働いていた頃は毎年、卒業シーズンになると、チューリップの1本巻きを何百本も制作し、学校へ配達していた。

幼稚園の卒園式では、式典の最後に先生から園児に花を手渡すことがよく行われていて、その花は幼稚園側が花屋に手配するか、PTA役員が手配して園児にプレゼントすることもあった。一方、私が今、花屋を経営している台湾では、園児から先生へ花を手渡すことが一般的だ。ただ、園児が個別に花屋に注文するわけではなく、日本のPTAのような親同士のグループの代表者が集金し、まとめて購入する点では日本と似ているかもしれない。

また、花と一緒にメッセージカードを添えることも台湾では多い。園児一人ひとりが先生への感謝の気持ちを込めて、まだまだ不慣れな字で「謝謝老師(先生ありがとうの意)」と書いたり、漢字が書けない子は注音(ボポモフォとも呼ぶ)で「ㄒㄧㄝˋ ㄒㄧㄝ˙ㄌㄠˇㄕ」(同じく謝謝老師の意)と書いたりもする。ちなみに、注音は日本語の平仮名に該当する台湾独自の表音文字で、小学校低学年くらいまでは注音で漢字の発音を覚えていく。

台湾で花と一緒にメッセージカードを添えることも多い(筆者提供)

 

負担は大きくてもやり甲斐のある台湾の先生

日本では「学校・幼稚園の先生」は小学生のなりたい職業として根強い人気がある一方、なり手不足も問題になっていると聞く。モンスターペアレントの増加や過酷な労働環境に起因しているのだろうが、先生が置かれている状況は、実は台湾も日本と変わりない。

というのも、台湾の先生は保護者とLINEを交換するのが当たり前で、親のLINEグループに先生が入っていることも珍しくないからだ。休みの日でもLINEや電話に対応し、台湾でも近年増加しているモンスターペアレントに捕まれば、夜中まで長電話に付き合わされることもある。実際、私がフラワーレッスンをしている最中にも、電話で先生と長時間喧嘩をしている親御さんがいた。

ただ、学校や家での出来事を共有しやすく、子どもの緊急事態にはすぐに連絡が取り合えるメリットもある。実際にはそういったマメな対応に感謝する親が非常に多く、卒園式や卒業式では子どもから先生へ花を渡すだけでなく、親御さんから先生へ花や贈り物をプレゼントすることも珍しくない。

台湾の先生は、仕事の負担は大きいが、多くの人から尊敬され、感謝されるやり甲斐のある仕事といえそうだ。私は学校の先生ではないが、講師としてフラワーデザインや生け花を教えているだけでも、それをひしひしと感じる。知り合いの日本人のピアノ講師やアート講師に聞いてみても、生徒から感謝の言葉をよくもらうようで、日本との立場の違いを感じる。

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