2023-07-18 経済

スイスに根付くプーチン・ネットワーク

© Petrov Igor

注目ポイント

経済紙ハンデルスツァイトゥングが、米国のブラックリストに載っているスイスの個人と企業について詳しく報じた。その内容を転載する。

テロリスト、麻薬の売人、オリガルヒ(新興財閥)。その多くが世界で最も恐れられるブラックリストに載っている。米政府の「特別指定国民および資格停止者(SDN)」に指定されているのだ。このリストに載ると事実上、国際的には終わりだ。米国で営業する銀行に口座を作ることも、自身の資産にアクセスすることもできなくなる。リスト掲載者との取引は禁じられ、破るなら重い処罰を覚悟しなければならない。

スイス人、スイス居住者、スイスに拠点を持つ企業も、この米国のブラックリストに載っている。このSDNリストには対ロシア制裁の対象となる個人や企業も含まれる。2014年のロシアによるクリミア併合以来、制裁は時折行われてきた。実施するのは米財務省外国資産管理室(OFAC)だ。ウラジーミル・プーチン大統領がウクライナに大規模な攻撃を開始して以降、米国はSDNリストを大幅に拡大した。特に過去15カ月間に制裁対象者が多数追加された。2022年2月から2023年5月にかけて、米国はスイスの個人24人とスイスの企業16社に制裁を科した。

ハンデルスツァイトゥングは、米国によるロシア制裁の対象となったスイス国民・スイス居住者、居住権を有する個人、スイスに拠点を置く企業の名前を挙げる。米国財務省の報告書、つまりSDNリストまたは公的報告書に基づき、スイスと関連があると評価できる個人や組織等のみ記載する。

2023年5月19日時点で、米国の制裁対象者リストにはスイス国籍保有者・スイス居住権保持者24人が掲載されている。

シュトゥトハルター・ネットワーク

ルツェルンの実業家アレクサンダー・ヴァルター・シュトゥトハルター氏は、2018年以来米国から制裁を科されているオリガルヒ、スレイマン・ケリモフ氏の金融ネットワークの重要人物とされている。シュトゥトハルター氏は特に、ケリモフ氏のために会社を経営していた。米財務省の発表によると、シュトゥトハルター氏はケリモフ氏の代理として活動し、ケリモフ氏のためにマネーロンダリング(資金洗浄)をしていた。日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、どのようにシュトゥトハルター氏が名義人を利用し何十億も国外へ持ち出したかを調査し、報じている。

モレッティ・ネットワーク

スイス・イタリア系の実業家ヴァルタ―・モレッティ氏は直接または間接的にロシア政府のために取引を行ったとされる。モレッティ氏や、同氏のパートナーや企業からなるネットワークは、水圧プレスや甲鉄板を含む、取扱いに注意を要する西側の技術や軍装備をロシアの諜報機関やロシア軍にひそかに輸出したとみられる。さらにモレッティ氏と従業員はロシアの核兵器研究所にも軍装備品を調達した疑いがある。

ウスマノフ・ネットワーク

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