注目ポイント
俳優約16万人が加入する全米俳優組合(SAG-AFTRA)が14日、先月30日から12日まで行われていた映画会社などの全米映画テレビ制作者協会(AMPTP)との交渉が失敗に終わったことを受け、43年ぶりにストライキに突入した。「年内には妥結できない」との声も出る中、ストの背景を探った。
俳優ら約16万人が加入する全米俳優組合(SAG-AFTRA)が14日、43年ぶりのストライキを決行した。俳優らはロサンゼルスやニューヨークの製作会社前でプラカードを掲げ、デモ行進を実施した。組合側が求めているのは、動画配信サービスの急速な拡大に伴う報酬制度の見直し(視聴者数に基づく報酬の引き上げなど)や、生成AIを通じた肖像の不正使用に対する規制作りなどだ。
約1万1000人が所属する米脚本家組合(WGA)も今年5月から同様の要求を掲げたストライキを続行中で、米エンターテインメント界を支える2つの主要組合が同時にストを行うのは1960年以来、63年ぶりとなった。
ハリウッドでは14日、ストライキに数千人の俳優が参加。ニューヨークでも多くの俳優らがデモ行進し、その中の1人、オスカー女優のスーザン・サランドンは、「AIはあらゆる人に影響を与える」と危機感を訴えた。
一方の製作者側のAMPTPは13日、「報酬の増額、年金と健康保険料の上限の大幅引き上げ、オーディション保護、シリーズオプション期間の短縮、俳優のデジタル上の肖像を保護する画期的なAI提案などをSAG-AFTRAが却下した」との声明を発表。組合側が交渉を延長しないことを「非常に遺憾に思う」と述べ、「この業界に生計を依存している何千人もの人々の経済的困難をさらに深刻化させる方向に導いた」と付け加えた。
AMPTPはアマゾン、アップル、ディズニー、NBCユニバーサル、ネットフリックス、パラマウント、ソニー・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーなど映画テレビ番組制作大手で組織されている。
ネット配信で俳優の収入激減
だが、組合員約16万人のうち、10万人以上は映画やテレビのエキストラとして生計を立てている俳優たち。関係者は、製作会社はすでに経費削減のため、エキストラの代わりにAIで生成し、彼らの職を奪っていると指摘。今後は技術のさらなる進化により、エキストラをほとんど必要としない作品製作になっていくだろうと推測した。
そんな危機感はエキストラだけではなく、主要キャストを務める俳優らも共有している。関係者によると、製作者側はAIに俳優の顔形や身体のデータを読み込ませ、データ収集当日の1日分の出演料を支払うだけで、後はそのデータをAIが駆使して生成し、作品を完成させることも可能になっているというのだ。組合側は肖像権侵害からの保護、補償も求めている。