注目ポイント
台湾が豊かさで日本を超える日が近づいている。台湾は生活レベルの指標となる1人当たり名目GDP(国内総生産)で2022年、韓国を抜き、日本に肉薄した。半導体をはじめとするIT(情報技術)産業で世界を席巻し、さらなる躍進を遂げようとしている。土地は九州ほどの広さしかなく、人口も約2300万人と中規模で、資源にも恵まれない台湾が、なぜこれほど発展を続けているのか。その強みと課題に迫る。
台湾が抱える地政学リスクは、世界の投資会社の判断にも影響を与えている。著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは、2022年7~9月期に41億ドルを投じて取得したTSMC株を、同10~12月期になって9割近く手放した。その理由について、バフェット氏はTSMCを「経営は世界で最上級」と称賛する一方、「拠点が良くなく(投資を)再評価した」(『日本経済新聞』5月8日朝刊)と話している。

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また、TSMCには日米欧などから工場誘致の申し出が相次いでいたが、創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は従来、こうした国々での半導体生産は高コストで人材も不足しているとして、海外進出には否定的だった。しかし、2022年12月、米アリゾナ州に建設中の自社工場で開かれた記念式典に出席し、「グローバリゼーションはほぼ死んだ。自由貿易もほぼ死んだ」と述べた。この発言は、台湾有事も視野に入れ、台湾での生産にこだわってきた方針を転換したものと受け止められ、台湾政界や経済界に衝撃が走った。
こうした事例が示すように、台湾を取り巻く情勢は実態経済にも影響を与えるようになってきており、台湾経済に不確定要素をもたらしている。2024年1月の総統選で決まる蔡氏の後継者にとって、台湾経済の持続的な発展の環境づくりが最大のテーマとなっている。
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