2023-07-14 政治・国際

欧州議会、生態系保護へ自然再生法案可決  陸、海の失われた自然の20%回復を目指す

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欧州議会は12日、生態系保全のため、農地を含む、自然が破壊された陸や海の各20%を再生することを目指すという画期的な「欧州自然再生法案」を緊迫した審議の末、ようやく可決した。2030年までに欧州連合(EU)加盟国に対し、目標達成のための政策を打ち出すことを義務付けるが、農家などの反対派は非現実的だとして激しい抵抗を示した。

欧州議会は12日、自然のままの生物の生息地と生態系の回復と保護を目的とした「欧州自然再生法案」を緊迫した審議の末、ようやく可決した。画期的とされる同法案は、農地を含む自然が破壊された陸や海の各20%を再生することを目指し、2030年までに欧州連合(EU)加盟国に対し、目標達成のための政策を打ち出すことを義務付ける。

同法案は持続可能なEU経済の実現に向けた成長戦略「欧州グリーン・ディール」の目玉の一つとされ、同日の投票では賛成336票、反対300票、棄権13票で可決された。

国際環境保護団体「グリーンピース」によると、これは過去30年間でEUにおける生物多様性を保護するための初めての重要な法整備となる。その目的は、生物多様性の生息地を改善または再構築し、受粉昆虫の減少を食い止めて逆転させ、海草などの海洋生息地を回復させることだという。

世界は土地開発や環境汚染、気候変動により生物多様性の危機に直面しており、一部の専門家は地球が6度目の大量絶滅の時期に突入していると主張。5月の調査によると、地球上の種のほぼ半数が急速に個体数を減少させている。

グリーンピースの中東欧生物多様性プロジェクトマネージャー、シュペラ・バンデリ氏は声明で、「今回の可決は、残されたものを回復し、成長させる希望がまだあることを示している」と指摘。「またもや前例のない熱波が欧州を襲う中、気候変動を乗り越えて食糧供給を確保するには、自然の味方が必要であることは明らか」と付け加えた。

今回の投票は、EU議会最大の議員グループである欧州人民党(EPP)が計画拒否運動の先頭に立った後、数か月にわたる交渉の末にようやく行われるなど、欧州議会内での長年の分裂が露呈した。

この法案に対して最も声高に反対していたEPPグループのマンフレッド・ウェーバー会長は、採決後の記者会見で、この法案が農業に損害を与えるとし、法案による経済的打撃を強調した。

同氏は、「この法律は食料生産の問題について本当の答えを与えてくれておらず、地方自治体に法的な不確実性をもたらしており、再生可能エネルギーへの移行を支援するどころか、潜在的に悪影響を及ぼす可能性がある」と訴えた。

一方、投票前に推進派のフランシス・フィッツジェラルド議員(アイルランド)はツイッター動画で、「良心と誠意を持ってこの法案に反対票を投じることはできない」とした上で、「われわれは生物多様性を保護する必要がある。国民、企業、そして何よりも将来の世代を守るためにはこの法律が必要だ」と主張した。

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