注目ポイント
2022年は穏やかな一年ではなかった。気候変動による極端現象が頻発し、世界各地でさまざまな災害が発生した。ハリケーン「イアン」はアメリカとブラジルを襲って1000億米ドルの損害をもたらした。夏にはヨーロッパが熱波に見舞われ、山火事や干ばつが起き、パキスタンでは百年に一度というレベルの大洪水が起きて国土の8分の1が冠水した。2023年の年初にはトルコとシリアで大地震が発生した。それより先には、スマトラ島沖地震(インド洋大津波)や日本の311東日本大震災があり、誰もがショックを受け、無力感を覚えたものだ。人間は大自然の力にはかなわないのである。
台風が発生し、台湾への影響が予測される時、まず中央災害応変センターが開設され、災害防救科技センターは迅速に災害情報による判断と警戒対応を建言する。しばしば海外視察に招待される陳宏宇によると、台湾の災害対応の起動体制は世界でも最も迅速だという。指揮官が着任すると、「災害情資ネット」を通してすぐに台湾各地の防災情報が見られ、警報発令のタイミングが確保されるのである。
災害防救科技センターでは各分野の学者・専門家の知識を結集し、防災情報を提供する。平時は防災・減災テクノロジーを研究するとともに、大きな被害が予測される地域に関しては事前に防災計画を立てている。
情報やデータの面では、災害防救科技センターは政府各機関のデータを統合している。内政部営建署、交通部中央気象局、経済部水利署、公路総局、農業委員会水土保持局などの部門が観測したデータを「災害情資ネット」プラットフォームに統合している。「政府各部門の資料をひとつのプラットフォームにつなぐことで、オリジナルのデータの価値を高めています。また数字を可視化して一目瞭然の図やグラフにし、リアルタイムの情報として提供します。これによって、中央災害応変センターでは、全国の気象、水象、土壌の情報を掌握できるのです」と言う。
このプラットフォームでは、台湾が開発した衛星の福衛7号(FORMOSAT-7)、アメリカのNOAA、日本の気象衛星ひまわり、EUのコペルニクスなどのリソースもつなぎ、データ分析に活用している。陳宏宇は「災害情資ネット」の中の海量情報を見せてくれた。その中の一枚のスライドは、2017年のNissa台風が上陸する前の予報図で、5ヶ国以上の気象当局による予想経路が描き込まれている。国によっては予測経路は150キロも離れている。「台風が台湾に上陸する前から私たちは事前に準備し、西寄りか東寄りかによってどの地域への影響が大きくなるかを図で示し、リアルタイムで自治体に送り、早めの防災措置が採れるようにしています」と言う。水利署が河川に設けたカメラの映像もリアルタイムで見ることができる。降水量や水位が警戒ラインを超えた時は、地方の消防局に通知し、避難を建言する。
さらにSNSも活用される。SNSとビッグデータ技術が発達し、災害防救科技センターでもSNS災害情報プラットフォームを設けている。一般市民がSNSでシェアした災害情報を収集することで、迅速に対応することができる。
地震や台風のほかに、空気の質や降水量、ダムの状況、火山活動、低温情報などもすべてプラットフォーム上の地図に示されている。台湾各地のダムの水量はすべて可視化されており、また火山については、モニタリング指標である微震動、二酸化炭素濃度、温度、ラドン濃度などもすべて公開されている。
