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エヌビディアは29日、今回の中国向けAIチップ輸出規制の報道について、もしこれが実施されれば、米国の半導体産業は長期的に多大なコスト負担増となり、米中関係を再び悪化させることになるとの声明を出した。
中国の人工知能(AI)の開発に対抗するため、米国政府がAI半導体輸出禁止措置を拡大・強化する方針を明らかにしたことを受けて、AIチップ設計大手のエヌビディア(Nvidia)は29日、輸出禁止措置は米国の半導体産業に打撃を与え、広大な中国市場を失い、米中関係を再び後退させるだろうと警告した。
米政府、中国への半導体輸出規制強化を検討
生成AI(Generative AI)は大きなトレンドとなっており、多くのキラーアプリケーションがチャットボットや検索エンジンなど様々な産業アプリケーションですでに成果を上げ、AIチップの需要は急増している。
過去10年間、中国はAI研究論文と産業発展の両面で相当な成果を上げてきた。米国は、政治的対立を考慮すると、中国がAI技術を継続して開発することが脅威になると懸念している。とりわけ、これらの先端技術を軍需産業に応用されれば、米国の国家安全保障上の問題を引き起こしかねない。
最近、米政府の事情通が「ウォール・ストリート・ジャーナル」に語ったところによると、ホワイトハウスは中国に対する産業封じ込め政策のレベルを引き上げ、AIチップの輸出をより厳しく規制する方針だという。現時点において、米商務省はまだコメントを出していない。
報道では、米商務省は早ければ来月上旬にも、エヌビディアや他のチップメーカーに対し、中国やその他の懸念国へのチップの無許可輸出を禁止する措置を取る可能性があるという。
実は昨年10月、米国は輸出を禁止するチップのリストを既に発表しており、そのほとんどが高度なハイエンド製品だったのだが、今回そのリストがミッドレンジ製品にまで拡大されると伝えられ、業界は騒然となった。
当時、エヌビディアは輸出規制の影響が中国市場に及ばないように、リストにある画像処理半導体(GPU)A100の設計を規制基準を下回るA800のバージョンに変更して審査に合格したが、このA800も輸出禁止リストに含まれる可能性があるようだ。
また、中国企業がリースという名目で輸出禁止を回避している兆候が多く見られることから、米政府は中国のAI企業に対するクラウド・コンピューティング・サービスのリースを制限することも検討している。
しかし、ホワイトハウスの差し止め命令という大きな動きは、中国のAI産業の発展を抑制することはできるが、同時に反発もある。エヌビディアをはじめ、AI開発に力を入れている多くの企業は、中国市場が収益の大部分を占めている。差し止め命令は間違いなく彼らにとって大きな打撃となるだろう。