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11日から2日間の日程でリトアニアの首都ビリニュスで行われた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に、日本の岸田首相らアジア太平洋4か国の首脳も出席した。同会議は共同声明を発表し、「中国の野心と威圧的政策は、NATOの利益や安全、価値観への挑戦」と明記。今回の同首脳会議は、主要な安全保障問題がウクライナだけではないことを示した。
11日から2日間の日程でリトアニアの首都ビリニュスで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に、アジア太平洋地域の首脳4人が招待されたことは、欧州・北米防衛同盟の議題となっている主要な安全保障問題がウクライナだけではないことを示唆した。それを踏まえ、NATOのストルテンベルグ事務総長は、「今日ウクライナで起こっていることが、明日アジアでも起こり得る」という懸念を表明した。
首脳会議を前にストルテンベルグ氏は、「中国の海外での強圧的な行動と、国内での抑圧的な政策は、NATOの安全保障、価値観、利益に挑戦するものだ」と米誌「フォーリン・アフェアーズ」(電子版)に寄稿。「中国を含む独裁国家はウクライナにおけるロシアの行動を注視し、攻撃的行動のコストと利益を比較検討している」と指摘した。
ストルテンベルグ氏のこうした懸念を反映し、首脳会議初日に発表された共同声明では、「中国の野心と威圧的政策は、NATOの利益や安全、価値観への挑戦」と明記し、覇権主義的行動を続ける中国に強い懸念を表明した。
また、NATOは依然として中国との「建設的な関与は開かれている」とするものの、中国とロシアの「戦略的パートナーシップの深化」と、両国の「ルールに基づく国際秩序を弱体化させようとする相互強化の試み」について深刻な懸念を表明した。
首脳声明は中国の対立的なレトリックと偽情報を非難。中国は「戦略、意図、軍事力増強については不透明なままでありながら、世界的な影響力と計画力を増大させるため、政治的、経済的、軍事的手段を幅広く利用している」と指摘した。
実際、中国の習近平国家主席は先週、対台湾作戦などを担う東部戦区の施設を訪れ、将兵らに「戦争に備えた任務の新局面を切り開くよう努めなければならない」と指示した。東部戦区は江蘇省南京市に拠点を置き、台湾周辺での大規模演習などを行っている。
習主席は、米国と台湾の接近を念頭に、「わが国の安全を巡る情勢は不安定性、不確定性が増している」と主張。危機感を強め、全力で作戦遂行能力を高めるよう命じた。実戦に備えた軍事訓練を通じ、勝利する能力の向上が重要だとしている。
そのような状況下、今回のNATO首脳会議では「台湾」を特定しなかったものの、中国共産党が「必要なら武力でも台湾を統一する」との強硬姿勢は、欧州全体を巻き込んだロシアのウクライナ侵攻と明確な比較対象になっていると米CNNは伝えた。