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北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は10日、リトアニアの首都ビリニュスで記者会見し、トルコがスウェーデンのNATO加盟に向けた批准手続きを進めることで合意したと発表。スウェーデンの加盟が事実上決まった。これにより、北欧全5か国がNATO入りすることで、ロシアに対する防衛力が一層強化される。
トルコのエルドアン大統領は10日、スウェーデンのNATO加盟に向けた批准手続きを進めることに同意した。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長が、両国首脳との数時間にわたる会談後に発表した。
フィンランドに続き、スウェーデンのNATO加盟が事実上決まったことで、北欧全5か国(デンマーク、アイスランド、ノルウェーはすでに加盟)が同盟入りすることは、ロシアのプーチン大統領にとって大きな痛手となる。
ストルテンベルグ氏は記者会見で、「同盟国の安全保障に資する歴史的な一歩」と歓迎した。トルコは「可能な限り早く議会に提案する」としているが、批准される日程については踏み込まなかった。ロイター通信によると、スウェーデンのクリステション首相は10日「非常に大きな一歩を踏み出した」と謝意を示した。
エルドアン大統領は、トルコ議会がスウェーデンのNATO加盟を承認する前に、欧州連合(EU)はトルコのEU加盟に道を開くべきだと要求。スウェーデンのNATO加盟承認との〝取引材料〟の一つにした可能性もある。EUは現在、20か国まで拡大している。
エルドアン氏とクリステション氏は11~12日のNATO首脳会議に先立ち、ビリニュスで会談していた。会談にはストルテンベルグ氏も参加。同大統領は、スウェーデンの加盟は昨夏の首脳会議で合意した内容の履行にかかっているとし、トルコの譲歩を期待すべきでないと述べた。
ロイター通信によると、エルドアン氏はまた、ウクライナとロシアの戦争が終結すれば、ウクライナのNATO加盟プロセスも容易になるだろうと指摘。17日に失効するウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する合意について、延長についてロシアのプーチン大統領と協議する方針を示した。またプーチン大統領は8月にもトルコを訪問するとの見通しを示した。
NATO加盟には全加盟国31か国の批准が必要な中、トルコの反対が最大の関門で、米国を含む主要加盟国が説得に当たっていた。ハンガリーも批准を終えていないが、近く批准手続きに入る見通しという。
昨年6月、フィンランドとスウェーデンがNATO加盟を申請した際、両国がトルコと協力し、トルコ国内で違法行為を繰り返しているとされる「クルド過激派」の引き渡しに応じれば、エルドアン政権は加盟に反対しないとする姿勢を示していた。
ところがスウェーデンでは昨年9月の総選挙で右派の民主党政権が誕生。今年1月に首都ストックホルムのトルコ大使館前で極右活動家がイスラムの聖典コーランを焼く事件が起きた。この事件は人口の99%がイスラム教徒のトルコでも大きな反発を呼び、エルドアン政権はスウェーデン政府に「イスラム嫌悪」の取り締まり強化を要求。現状ではスウェーデンのNATO加盟は受け入れられないとしていた。