2023-07-10 政治・国際

米がウクライナ支援決めたクラスター弾とは ゼレンスキー大統領が供与を求めるワケ

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注目ポイント

ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援で、米国が殺傷能力の高いクラスター(集束)弾の供与を決めたことについて、英国やスペインなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国の一部は、使用や供与自体に反対する立場を表明。NATO内の温度差が浮き彫りになっている。英BBCはゼレンスキー大統領がクラスター弾を求める理由を解説した。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は9日、ウクライナがロシア領内や人口密集地域でクラスター弾を使用しないと書面で確約したと説明。ウクライナのレズニコフ国防相はツイッターで、「都市地域では使用しない。ロシア軍が集中した戦場で、敵の防衛線を破るために使う」と表明し、理解を求めていた。

一方、英国のスナク首相は自国が同条約に「加盟している」とした上で、米国の批判は避けながらもクラスター弾の使用に反対する立場をにじませた。イタリアのメローニ首相も声明で、「イタリアは条約を順守している。条約の普遍的な適用を望む」と強調した。スペイン通信によると、同国のロブレス国防相は「この爆弾ではウクライナの正当防衛は実現できない」と供与に反対する考えを示した。

ロシア前大統領のメドベージェフ安全保障会議副議長は8日、「資源を使い果たしてクラスター弾を約束し、北大西洋条約機構(NATO)に手招きしている。その実現は、第3次世界大戦を意味する」と通信アプリへの投稿で反発した。

ロシア外務省のザハロワ情報局長は8日、クラスター弾が不発弾となり紛争収束後にも爆発を引き起こす恐れがあるとして、米国が「ロシアとウクライナの子どもを含めた犠牲者への責任を負う」と批判。供与が「米国とその衛星国が紛争にさらに深く関与することを意味する」と指摘したが、自国の軍事作戦には「影響を与えない」と強調した。

そのロシアはウクライナ侵攻ですでにクラスター弾を使用しているという。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはウクライナ侵攻後の昨年6月、ロシア軍がウクライナ北東部の都市ハルキウでクラスター弾を使い、無差別な砲撃で何百人もの民間人を殺害しているとする調査報告書を発表。ウクライナ東部ドネツク州の主要都市スラビャンスクの市長も昨年7月、東部への攻勢でロシアがクラスター弾を使用していると非難した。

 

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