2023-07-10 政治・国際

沖縄で綱引き?中国が県知事訪中を歓迎、台湾は立法院長が与那国訪問も首里城復元用木材寄贈式を中止

© 火災で焼失する前の首里城正殿

注目ポイント

沖縄県の玉城デニー知事が7月3日から7日まで中国を訪問し、李強首相と会談するなど厚遇を受けるなかで中国との交流促進姿勢をアピールした。一方、台湾の游錫堃(ゆう・しゃくこん)立法院長(国会議長に相当)は4日、台湾から船で沖縄県・与那国島を訪問し、今後の客船の定期航路開設や観光振興などに言及。また5日には台湾北東部の宜蘭県で、台湾から沖縄県に無償提供する首里城復元用のベニヒノキの寄贈式が予定されていたが、台湾側が突然式典を中止するなど、沖縄を舞台に中台両岸や中国と日米、中央と沖縄県の綱引きが垣間見える。

首里城は2019年10月31日未明に発生した火災で、正殿と北殿、南殿が全焼した。建屋は国の所有だが、2019年2月1日に管理および運営が国から沖縄県に移管された矢先の火災だった。2022年11月3日、首里城公園内で正殿復元整備工事起工式が行われ、2026年秋の完成を目指している。

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未明の火災で炎上する首里城正殿など=2019年10月31日

中国は沖縄県知事厚遇し日米の台湾関与をけん制

沖縄県では今年4月県庁内に、アジア太平洋地域において平和の構築に貢献するとして「地域外交室」を新設。その後の知事の外国訪問は韓国に続いて2か国目で、玉城氏は今回の訪中に関し「いろいろな国、地域とつながり、互恵関係を続けていきたいと伝える」などと、地域で高まる緊張を意識したものであることを強調していた。

もちろんコロナ禍以前のような中国からのインバウンドを誘致し、中国の対沖縄投資や、沖縄を中継地とする貿易の拡大などが念頭にあるとみられるが、同時に中央などに対し米軍基地負担の軽減を求めるうえでも中国との接近は、カードとして好都合だ。

同じように台湾を「核心的利益」として「統一」をめざす中国にとって、台湾海峡ににらみをきかせる沖縄の米軍基地を障害とみるなか、沖縄県知事との良好な関係は、やはり日米や、台湾を揺さぶるカードとして有効であることが、玉城氏を厚遇した背景とみられる。

かつての琉球王国は、1609年以降薩摩藩の統制下にあったが、一方で明、清にも朝貢。薩摩藩は貿易上の利点からこれをあいまいにしていたため「両属」だったとされる。

中国の習近平主席は6月1日、古文書を収集・展示する国家の資料施設を視察したが、後日その模様が中国の共産党機関紙「人民日報」によって報道され、資料施設の解説員が習氏に対し、沖縄県の尖閣諸島が「中国の領土に属すことを示す」として木版で印刷された古書について説明したことや、習氏が福州の琉球館の存在や沖縄との深い交流にも言及したことなどが紹介された。

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北京の人民大会堂でブリンケン米国務長官(左)と握手を交わした習近平国家主席=2023年6月19日

台湾の対岸に位置するアモイ副市長、福州市党委員会書記を経て福建省長となった経歴を持つ習近平氏は、「台湾統一」の姿勢をことあるごとに強調してきた。中国海軍の3隻目の空母が「福建」と名付けられたのも、対岸の「台湾」を意識したとされている。

今回習氏は、玉城氏の福州市訪問にあわせるかのように6日、台湾方面を担当する軍東部戦区を視察し、戦いに勝つ能力の向上を加速させるよう指示。改めて「台湾統一」への強い意欲を示し、台湾問題をめぐり連携を強める日米をけん制した。

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