注目ポイント
沖縄県の玉城デニー知事が7月3日から7日まで中国を訪問し、李強首相と会談するなど厚遇を受けるなかで中国との交流促進姿勢をアピールした。一方、台湾の游錫堃(ゆう・しゃくこん)立法院長(国会議長に相当)は4日、台湾から船で沖縄県・与那国島を訪問し、今後の客船の定期航路開設や観光振興などに言及。また5日には台湾北東部の宜蘭県で、台湾から沖縄県に無償提供する首里城復元用のベニヒノキの寄贈式が予定されていたが、台湾側が突然式典を中止するなど、沖縄を舞台に中台両岸や中国と日米、中央と沖縄県の綱引きが垣間見える。
玉城氏が中国を訪問している最中の台湾との交流で、古屋氏は記者団に対し、正式な外交関係がない日台間における議員外交の重要性を指摘。「友好関係を前に進めたい」「共通の価値観を持つ地域・国々が連携していくことが中国に対する牽制(けんせい)につながる」などと述べており、沖縄県が対中国交流を強化する姿勢を示す中、日本の国会議員らとともに台湾側も「先島と台湾」の交流強化の姿勢を示し、バランスとろうとしたものとみられる。
台湾を訪れた古屋氏らは蔡英文総統とも会談。蔡氏は昨年他界した安倍晋三元首相が生前「台湾有事は日本有事」と発言したことなどに触れ、「台湾と日本の関係を深めることに尽力した。改めて追悼と感謝を表したい」などと語り日台の協力関係強化を訴えた。
「日台互助」体現するベニヒノキの寄贈式中止
加えて台湾側にはもう一つの動きもあった。
2019年10月31日の未明の火災により焼失した沖縄県那覇市の首里城正殿などの復元に向け、台湾が同地産ベニヒノキ5本を日本に無償提供するとして、7月5日に台湾北東部・宜蘭県内で寄贈式が行われる予定だったが、前日の4日、台湾側は急きょ式典の中止を決めた。

中止の理由について当初、行政院(内閣)農業委員会林務局羅東林区管理処では「不明」としていた。しかし外交部(外務省)では寄贈の日程は日台で改めて調整中と説明。台湾の対日窓口機関、台湾日本関係協会の陳志任副秘書長もその後の定例会見の中で言及し、特定の木材製品の輸出規制に関係する、などとしたうえで、申請手続きを円滑に進められるよう日本側と調整している、と説明を補足したが、台湾紙記者や沖縄県の地方議員らは「木材製品の輸出上の問題は事前にわかっていた話。式典中止は唐突で額面通りとは思えない。玉城知事の中国訪問に対し、『有事』を懸念する台湾として、沖縄県の対中接近に対し、警告を発したかったのではないか」と話している。
台湾が寄贈のために用意したベニヒノキは長さ約3.6メートル、直径40~50センチ。木目の通直性や緻密さ、材質が安定し狂いが少ないことから加工しやすく、材木としては理想的で、気候が近い沖縄での使用にも適しているとされるが、現在台湾では輸出に規制をかけるなどで保護している。
しかし台湾のベニヒノキは、平成4年の前回の首里城復元時にも活用されており、台湾では、沖縄と台湾の歴史的つながりを象徴するだけでなく、日本と台湾が培ってきた助け合いの精神を体現するものとして、今回の無償提供を決めた経緯がある。