注目ポイント
「スペック」の面から言うと島根県は決して悪くなく、物産の豊かさでも他の県に引けを取りません。しかし、島根県は依然として人口流出がひどい地域の一つで、主要観光地以外の地域は運営に非常に苦労しているのです。もし今、ストーリー立てて島根県をアピールするなら、「美肌県」と「和牛」以外にどのようなコンテンツがあるのでしょう?
ある年、私は自分で島根の旅を手配しました。その時の私の本当の目的は四国遍路だったので、島根は温泉に入るだけで、長くとどまる予定ではなかったのです。ところが現地へ行き、台湾に戻るやいなや次の島根の旅の段取りをしたのです。そしてそれが寺社の取材を始める大きなきっかけになりました。
島根は日本人にとっても、出雲大社と温泉だけが有名です。しかし、日本人が正史として読む「古事記」や「日本書紀」の中に、ここが天の神様が初めて地上に降り立った場所だとはっきりと書かれているのです。この神様が八坂神社の祇園祭の主役である「蘇民将来/スサノオ」です。島根はまた台湾人もよく知る神話伝説「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)との戦い」の舞台で、勾(まが)玉発祥の地、黄泉の入り口、重要な宗教神事「神迎祭/神在祭」などが行われる場所です。
私はこの「島根」という名は、「国造り神話」の内容から見て、日本列島が初めて陸地として形作られた場所である「日本列島の根っこ」を指していると推測しています。
島根県はたくさんのストーリーで満ち溢れています。二次元文化が強い日本では、日本の作品の多くが島根県に関連した伝説のもとに設定されています。私は初めて日本へ行く前に、スサノオ/イザナギ/イザナミについて聞いたことがありました。ただ、これらの感動的な話がどこで生まれたのか知らず、京都が神話伝説の故郷だと勘違いしていたほどです。
しかし、今は島根県に行くと、観光推進でアピールしているメッセージは「ご縁の国」「神様が結ばれた伝説」「美肌1位の県」「温泉」、そして「蕎麦」を名産品としてアピールしていることに気づくでしょう。ところが私の記憶では、2020年の日本美肌県調査で、島根はすでに1位ではなくなっています。美肌県ランキングは毎年少し変動するので、常に1位をキープするのは簡単ではないのです。
これは気をつけなければならない点です。観光促進をする際、物産だけを重視し、ストーリーをアピールしなければ、すぐ島根県のようになってしまうのです。「美肌」の後に続く「1位」をそっと外すか、いつ1位だったという説明を書き加えないと、虚偽広告になってしまいます。他にも、現地でよくアピールしている「島根和牛」やその他の有名な農産物も、他に取って代わる物がないわけではありません。

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日本列島の根っこである島根県は、「国引き神話」の中で、天の神様が最初に縫い合わせて国土になった場所です。言い伝えによると、土地を縫い合わせた神様が、仕事を終えた後、手に持つ巨大な縄を束ねて投げて三瓶山を形作ったそうです。そして巨大な縄自体は砂浜に変わりました。ここの砂浜は日本海に面しており、日本海で水揚げされた新鮮な魚介類を味わいながら、大昔、神様が土地を縫い合わせた情景を想像することができます。