2021-12-06 観光

神々の里・島根県について語るならば、それは何だ? 旅のコラム:究極の観光マーケティングとは

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注目ポイント

「スペック」の面から言うと島根県は決して悪くなく、物産の豊かさでも他の県に引けを取りません。しかし、島根県は依然として人口流出がひどい地域の一つで、主要観光地以外の地域は運営に非常に苦労しているのです。もし今、ストーリー立てて島根県をアピールするなら、「美肌県」と「和牛」以外にどのようなコンテンツがあるのでしょう?

 

例えばインドに行った時、カレーがとてもおいしくて、3日続いて同行メンバーが次々に白旗を上げて降参した時でさえ、私は飽きることなく毎日、自ら2皿食べに行ったほどでした。ところが、観光スポットを回り始めた時、現地の土産物屋で売られている物が依然として「何を買えばいいのかわからない」ような、選択し難いものばかりだったのです。

 

数回目かの日本への旅の時に、私はこの問題に遭遇しました。それがきっかけで、北の韓国、南のインドやタイへと旅行先の開拓を始めたのです。しかし結局のところ、初めて行く時は見るもの全てが新鮮で、何を出されてもそのまま全て受け入れることができました。ところが2回目からは、もっとディープなところに行きたいと思い始めるのです。何によって旅行客を引き留め、また来たいと思わせるのか? そして観光の力を利用して地域経済をより活力あるものにするにはどうすればよいのでしょうか?

 

どこの観光地にも必要なのは、ストーリーのマーケティングだと思うのです。今、日本の古都を一つ取り上げるとすると、大部分の人が思い浮かべるのは京都でしょう。京都はかつての都で、通りを歩くと、あちこちで「ストーリー」に出会えます。

 

本能寺といえば、戦国時代の英雄の最後のストーリーの舞台です。また壬生寺といえば、正義を胸に時代の流れと戦い、命を落としていった志士たちが眠る場所です。そして清水寺は「清水の舞台から飛び降りる」ということわざでも有名です。毎年夏の祇園祭では、山鉾が一つまた一つと神話のストーリーを展開します。神話をよく知らなくても「蘇民将来之子孫也」という言葉は絶対に言えるでしょう。平安神宮と東西南北の4つの神社は、1,000年前に京都へ遷都した当時の執政者が、都建設の必要条件についてどう考えていたのかを表しています。

 

歴史好きの人であれ、神社好きの人であれ、このように様々な背景を持つストーリーから、お気に入りを見つけることができます。しかし、前記したこれらの特色は京都特有のものでしょうか?他の地域にはないのでしょうか?私は大胆な仮説を立ててみました。というのも、私たちの心の中にこのようなストーリーに対するあこがれがあるからこそ、その観光スポットを訪れた時、そこが客観的に見て特別であろうがなかろうが、心の中で自然にその土地とつながり、共鳴するのです。私は以前「遥かなる時空の中で」というゲームのファンで、ゲームに登場する観光スポットを一通り巡ってみました。一つのスポットに着くたびに、そこがとても小さく素朴で目立たない所であっても、「ここは神子が踊った場所だ!」と胸が高鳴ったものでした。

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