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ウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所をめぐり、建屋などの屋根に爆発物が設置されたなどとされる問題で、ウクライナとロシア双方が非難の応酬を繰り広げ、不測の事態への警戒が強まっている。専門家らは、冷却システムで爆発が起きれば、福島第一原子力発電所事故のような災害につながる可能性があると指摘している。
コシャルナ氏は、冷却水の貯水池は原子炉内の燃料棒を冷却し、過熱による燃料棒の溶融を防ぐという決定的な役割を担っていると解説。もし冷却システムが破壊された場合、水が流出し、8日以内に原発事故が発生するとされる。
ザポリージャ原発の6号機は依然として「高温停止」状態にあるため、冷却水は摂氏280度に達し、何らかの原因で漏れが発生すると蒸発してしまう。そうなると放射線流出を防ぐために残される時間はわずか27時間となるという。
専門家らは、ザポリージャ原発の冷却システムのどこかで爆発が起きれば、日本の福島のような災害につながる可能性があると指摘する。2011年3月11日の巨大地震とその後の津波により、福島第一原子力発電所の原子炉3基の冷却シーケンスが中断され、その結果、炉心溶融(メルトダウン)が発生し、放射線が放出されたのだ。
DWは、ウクライナの原子力・放射線安全センターが策定した、「ザポリージャ原発で原発事故が発生した場合に考えられる2つのシナリオ」を紹介した。
最初のシナリオでは、原子炉の厚さ1メートルの防護壁は無傷のままだが、内側部分は溶解する。これは、完全に停電した場合、または冷却システムが損傷した場合に発生する。専門家らは、そのようなシナリオでは、発電所の周囲約2・5キロの地域が放射線で汚染されると推定する。
同センターは最近の声明で「この場合は発電所で働く職員にのみ影響する」とし、職員はその地域から避難する必要があると警告した。
もう1つのシナリオは、防護壁の損傷を伴う原子力事故を想定したものだ。「このシナリオでは、放射線ははるかに広範囲に影響を及ぼし、より深刻な結果をもたらす。汚染範囲は気象条件による」と同センターは説明した。
ウクライナ国立科学アカデミーの環境モデリング専門家イワン・コバレッツ氏は、風の強さと向きに応じて、原発の周囲最大20キロの地域が大きな影響を受けるとみている。「この場合、即時避難が必要となる」と同氏は指摘。原発から550キロ離れたところの住民でも、一定の健康リスクに直面する可能性があると述べた。
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