2023-07-07 政治・国際

ザポリージャ原発に爆発物設置の情報 専門家「冷却システム破壊なら福島再現も」

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注目ポイント

ウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所をめぐり、建屋などの屋根に爆発物が設置されたなどとされる問題で、ウクライナとロシア双方が非難の応酬を繰り広げ、不測の事態への警戒が強まっている。専門家らは、冷却システムで爆発が起きれば、福島第一原子力発電所事故のような災害につながる可能性があると指摘している。

ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、ロシアが占拠するウクライナ南部にある欧州最大のザポリージャ原発で、複数の原子炉建屋の屋上に爆発物のような物体が置かれたとの情報があるとして、「世界は見ている」とロシアをけん制した。ウクライナ政府は先月22日、ロシア軍が大規模テロを画策し、原発冷却水の貯水池に地雷を新たに仕掛けたと非難していた。

ウクライナがロシアの工作の可能性を指摘する一方、爆発物が破裂しても原子炉自体を損傷させる威力はないともされるが、冷却システムの破壊が最大の懸念材料であることには違いない。

ザポリージャ原発には6基の原子炉があり、昨年2月の侵攻直後、ロシア軍に占拠された。米メディアによると、うち5基は占領後、安定的に停止した冷温停止状態(発電していない状態)となっているという。

そんな中、ウクライナ軍の参謀本部は4日、「原発の3号機と4号機の建屋の屋根に爆発物のようなものが設置されたという情報がある」と明らかにした。一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は5日、「ウクライナ政府の妨害行為による危険性が高まっていて、状況はかなり緊迫している」と主張。両者の言い分が対立するなか、不測の事態への警戒が強まっている。

ただ、原発の状況について、米シンクタンク「戦争研究所」は4日、ウクライナの仕業に見せかけようとするロシアの「偽旗作戦」の可能性があると説明。原子炉は非常に頑丈に設計されており、ロシアが現時点で事故を引き起こす恐れは低いとの見方を示した。

また、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は5日、ザポリージャ原発に爆発物が無いかについて、追加の立ち入り調査の実施を要請したことを明らかにした。「特に3号機と4号機の屋根、そして冷却システムなどへの立ち入りは不可欠だ」と強調。現時点では、現地に滞在するIAEA職員が調べた範囲では、これまでのところ爆発物などは確認されていないという。

ドイツの国営放送DWは6日、原発冷却水の貯水池近くにロシア軍が地雷を敷設したと先月伝えられた情報について、ウクライナの原子力安全専門家オルハ・コシャルナ氏の話として、「最も重要な冷却部分に爆発物を仕掛けることは、原発に直接の脅威をもたらす」と報じた。

ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は6月22日、ザポリージャ原発でロシア軍が冷却水の貯水池近くに地雷を新たに埋めたとして非難した。IAEAも地雷が敷設されたとの報告を承知していると声明で発表している。

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