注目ポイント
日本統治時代の台湾を襲った空襲、戦後の二・二八事件、言論の自由が制限された白色テロ時代――台湾のインディゲームには、日本のゲームシーンでは見かけない深刻なテーマを扱ったゲームが少なくない。なぜこうしたゲームが生み出されるのか、背景を探った。
外国人にも台湾人にも馴染みのない史実を発信する
では、当のゲーム開発者はどんな想いでこうしたゲームを世に出しているのか。「台北大空襲」を開発したTaiwan Mizo Games(迷走工作坊)創業者の張少濂氏は、「台湾人の記憶から薄れかけている第二次世界大戦の惨事をモチーフにすることで、戦後の独裁政権下では触れられることのなかった日本統治時代の歴史や、世代ごとに薄れゆく郷土や家族の記憶の一端にスポットライトを当てようと試みた」と話す。
とかく深刻な内容のゲームは「楽しんでゲームをしたい」と思うプレイヤーにとっては敬遠されがちだ。実際に「返校」や「台北大空襲」も、台湾のゲーム関係者や歴史モノを好む人々にはよく知られていても、一般層にも及ぶほどの人気を得られているかといえば、必ずしもそうとはいえないという。ただし、「台北大空襲」は今年2月のリリースから間もなく韓国語版の配信をスタートさせるなど、海外展開に力を入れている。張氏は、外国人にとっても台湾人にとってもほとんど馴染みのなかった台湾における空襲を扱うことで、「台湾人の視点から見た第二次世界大戦がどう見えるのかも世界に知ってもらいたい」と強調する。
近年、台湾では日本や国民党統治下で台湾を主体とした歴史を知る機会を奪われた人々が、自らの歴史を再認識しようとする動きがあらゆる分野で加速している。複雑な自国の歴史をゲームというメディアを通じて内外に発信しようとする試みは、台湾アイデンティティが高まる現代台湾において当然の姿といえるのかもしれない。
台湾以外の例として加藤氏が挙げてくれた「My Child Lebensborn」。第2次世界大戦中のノルウェーで“アーリア人増殖”のためにドイツ占領軍の兵士らとノルウェー人女性との間に生まれた子ども(レーベンスボルン)への迫害が題材。2018年の東京ゲームショウで国内にも紹介され、日本語版もプレイできる(My Child LebensbornのYouTubeチャンネルより)
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