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香港警察は3日、海外に逃れた民主活動家や元議員ら8人について、香港国家安全維持法(国安法)に違反した疑いで指名手配し、懸賞金をかけたと発表した。これに英米豪の政府は「世界中で人権や自由を脅かす危険な前例」になると中国側を強く非難した。
香港警察は3日、海外に逃れた民主活動家や元議員ら8人について、香港国家安全維持法(国安法)に違反した疑いで指名手配し、懸賞金をかけたと発表した。警察当局が同法違反で指名手配者を発表するのは異例で、西側の専門家は、海外での民主化運動をけん制するねらいがあるとみている。
会見で警察当局者は、国安法に基づき、これまでに260人が逮捕されたことを発表。うち79人が国家転覆やテロなどの罪で有罪になったことを明らかにした。
英国のクレバリー外相は同日、「英国や海外の居住者を脅し沈黙させようとする中国のいかなる試みも容認しない」と断固とした姿勢を示し、米国務省のミラー報道官も、「世界中で人権や自由を脅かす危険な前例」になると警告。米国は個人による表現や集会の自由を支持するとし、中国政府の「国境を越えた弾圧の取り組み」に反対し続けると強調した。オーストラリアのウォン外相は「深い遺憾の意」を表明した。
香港の旧宗主国・英国が中国と1984年に署名した香港返還後の統治をめぐる共同宣言は、97年の返還後も言論の自由などの権利が「50年間変わることはない」と規定。クレバリー氏は声明で同法が共同宣言に違反しているとし、中国政府に同法の撤廃を求めた。
ロイター通信によると、香港警察は指名手配した8人について、1人当たり100万香港ドル(約1843万円)の懸賞金を出し、逮捕に向け情報提供を求めている。
指名手配されたのは、民主活動家の羅冠聡氏や劉祖廸氏、立法会(議会)の元議員の郭栄鏗氏や許智峯氏など。外国に香港や中国に制裁を科すよう求めたなどとして、国安法の外国勢力との結託や国家分裂扇動などの容疑がかけられている。
また、当局は8人の資産を可能な限り凍結するとし、香港市民に金銭的な支援をしないよう警告した。活動家らは米国、英国、オーストラリアなど数か国に拠点を置いているという。
手配された1人で、オーストラリアに滞在する許智峯氏はロイター通信の取材に対し、新たに出された懸賞金は、「中国がより極端な権威主義に向かっている」ことを明確に示していると指摘。英国を拠点とする劉祖廸氏は、多くの民主主義国が香港との犯罪人引き渡し条約を停止しているという事実が、懸賞金を出す動機づけになったと語った。
また、米CNNによると、8人の中の1人で、オーストラリアに滞在する弁護士の任建峰氏は、香港警察が指名手配を発表して以来、〝リスト入りした栄誉〟をたたえる祝辞が殺到していると述べ、「喜びは感じない。だが香港がこんな風になってしまったことに悲しみを感じる。多くの人の目から見て、香港がどれほど低くなってしまったかを物語っている」と胸中を明かした。