注目ポイント
スイスで18日、9カ月ぶりに国民投票が行われた。多国籍企業の最低法人税率、環境保護法、COVID-19法の3つの案件は、いずれも可決された。
スイスは、2050年までに温室効果ガス( CO₂)排出量の実質ゼロを目指す。そのためスイス議会は2022年9月、気候対策に関する新しい法案「気候保護目標・イノベーション・エネルギー安全保障の強化に関する連邦法(KIG/LCI)」を可決した。
同法案は「氷河イニシアチブ(国民発議)」への対案として起草された。2021年6月の国民投票で改正CO₂法否決の原因となった新税案は含まれていない。
氷河イニシアチブはスイス気候保護連盟が発議した。2050年までにCO₂排出量ゼロを達成し、それ以降は化石燃料の使用を完全に禁止するといった内容だった。 しかし連邦政府と議会の過半数が、化石燃料の使用禁止は行き過ぎだとして反対。政府は同イニシアチブの骨組みは変えずに、化石燃料「禁止」を明記しない対案を練った。代わりに、10年間の気候対策予算として20億フラン(約2900億円)を積むことを盛り込んだ。ガス・石油暖房の気候配慮型への買い替えを促す家庭向け補助金や、企業の技術開発に対する奨励金に充てられる。
連邦議会は直接的対案ではなく、間接的対案という形式を選んだ。憲法改正を伴わない法律レベルの改正になるため、国民投票で可決されると迅速に施行できる。気候保護連盟は議会の決定に満足し、イニシアチブを取り下げ、間接的対案を支持すると表明した。
この対案は、左派から右派まで幅広い支持を得る妥協案とみなされていた。しかし、議会第1党の右派・国民党(SVP/UDC)がこれに反対。議会の可決した法律の施行に反対するレファレンダム(国民表決)を立ち上げ、必要数(5万筆)の2倍を超える有権者の署名を集めた。
国民党は環境保護法を、経済と国民に有害な「電力無駄食い法」と批判していた。2050年までに気候中立を達成するには化石燃料の使用を禁止しなければならず、結果的に電力の需要が増えると試算。ただでさえエネルギー価格が高騰する今、こうした負担を増やすことに猛反対していた。
COVID-19法
Covid-19法を2024年6月まで延長するCovid-19法改正案は賛成61.9%で可決された。
ほとんどのスイス人にとって、新型コロナウイルス感染症は過去の遺物になりつつある。そんな中、政府が通常の議会審議を経ずに決定を下す際の法的根拠となる「COVID-19法」を巡り、市民団体によるレファレンダムが提起された。スイスでCOVID-19法に関する国民投票が実施されるのは2021年6月、2021年11月に続き3回目。特にワクチン接種、陰性、治癒の「COVID証明書」とアプリ「SwissCovid」のトラッキングシステムについて法的根拠の是非が有権者に問われた。