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ロシアの独立系メディアは3日、武装反乱を起こし、ベラルーシに〝亡命〟した露民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏が約1週間ぶりに音声メッセージを公表したと伝えた。その中でプリゴジン氏は、今後もウクライナ侵攻に関わることを示唆する一方、サンクトペテルブルクのワグネル本部は2日、戦闘員の募集活動を1か月間停止すると発表。ウクライナでの軍事作戦への一時的不参加と、ベラルーシへの移動のためと説明した。
ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」は3日、ワグネルの創設者プリゴジン氏が約1週間ぶりに音声メッセージを公表したと伝えた。約40秒の音メッセージはワグネルに近い通信アプリのチャンネルで配信されたという。先月24日に武装反乱を起こしたワグネルは2日、戦闘員の募集活動を1か月間停止するとし、「(ウクライナでの)軍事作戦への一時的不参加と、ベラルーシへの移動のため」と説明した。
その中でプリゴジン氏は反乱の目的について、「裏切り者と戦い、社会を動員するのが目的だった」と改めて強調。「われわれは多くを達成できた」とも訴えた。〝裏切り者〟とはロシアのショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長ら軍幹部を指したものと思われる。
反乱後にプリゴジン氏とプーチン大統領との仲介役を務めたベラルーシのルカシェンコ大統領は、ロシア側からプリゴジン氏とワグネル戦闘員の身の安全の保証を確約されたことから、プリゴジン氏の事実上の亡命を受け入れ、6月27日に同氏がベラルーシに到着したことを発表した。ただ、プリゴジン氏は自身の居場所を明らかにしていない。
西側メディアによると、ベラルーシ東部モギリョフ州オシポビチ郊外では、軍事基地跡に300余りのテントのようなものが並んでいるのが衛星画像で確認されており、ワグネルの拠点になる可能性が指摘されている。
そんな中、サンクトペテルブルクにあるワグネルの本部「ワグネル・センター」は1日、看板を外し、別の場所に移転すると発表。「今後も国のために別の形と場所で仕事を続ける」とし、プリゴジン氏の音声メッセージとの微妙な食い違いが浮き彫りになった。
プーチン氏は反乱収束後の先月26日に演説し、ワグネル戦闘員は国防省と契約して任務を続けられるし、また、希望者はベラルーシに行くこともできると明言した。その後、ウォロジン露下院議長は2日、国防省と契約する大統領の提案に戦闘員の「多くが同意した」と明かした。
ロシア下院のカルタポロフ国防委員長はタス通信に3日、ワグネルのウクライナ侵攻参加停止に伴う新たな動員は、「現在も近い将来も必要ない」と発言。「(プーチン)大統領は計画的に契約軍人の募集が行われていると明言した」と述べ、軍の統制が保たれていることを強調した。
一方、ウクライナ軍のナエフ中将は1日、国営通信社ウクルインフォルムに対し、ロシア民間軍事会社ワグネル部隊のベラルーシへの移動は確認されていないと指摘。ロシアからベラルーシへの核兵器の移転も注意深く監視しているが、現時点でそのような動きは覚知されていないとした。