注目ポイント
台湾有事の際、エネルギーや半導体を輸入に頼っている日本経済が大きなダメージを受けることは取り沙汰される一方、どこかないがしろにされてきた食糧安全保証の問題。それがいま顕在化し、喫緊の課題として捉え始められています。“本当の意味での飢えとの戦い”から逃れるために考えるべきこととはーー山本一郎さんの月イチ連載です。
まあ何と申しますかさんざん揉めている中で日本がどういう役割を台湾とのかかわりの中で果たしていくのかという議論は大事なのですが、最近になって、いわゆる台湾周辺・台湾海峡におけるシーレーン問題で有事の際の事後対応を強く憂慮する議論が日本の政府内でも大きくなってきました。
と言っても、台湾問題をある程度認知している人からすれば「そんなことは分かっとろうが」という話であり、台湾産業界が熊本に工場疎開をするような戦時対応に柔軟に関われる仕組みを用意するのは良いんじゃないかと思います。そこでは、概ねにおいて台湾でなんかあると「半導体が来なくなる」ので民生品ほかの生産や調達ができなくなって経済が止まるよねとか、マラッカ海峡経由でやってくるタンカーが文字通り封鎖されると二週間ほどで一部の日本では電力が無くなってしまう程度の備蓄しかないでやんすという話が取り沙汰されてみんな困っておるわけです。
その話の一部が、ある種の『経済安全保障』という言葉でパッケージされて、安倍晋三政権の末期ごろから一気に対応しましょうやという話でわっせわっせ進めてきて、経済安全保障担当大臣まで設置されるに至り、そこに高市早苗さんが座ってそれはそれでどういうことやねんという話にもなっています。まあ気持ちは分かる。
電力を生み出せなくなるので困るは分かるんですが半導体は仕方ないやんけというご意見はぼちぼち出てくるわけなんですが、例えば一般的に使われるそんなに高度でもない半導体が入らなくなるだけで、例えば給湯器や食洗機、変電盤の制御パネルなどはいきなり生産ができなくなります。ぶっちゃけ給湯器が足りなくなれば新築の家は建たなくなりますし、お前らの愛用する自動尻洗い機(シャワートイレ的なもの)も半導体を使いますので壊れたら即お尻が洗えなくなって痔になってしまいます。大変だ。
要は、戸建て住宅だマンションだと日々の暮らしの中でも割と大きめの買い物を担うのはもちろんコンクリやら鉄やらも大事なんですが、実際には半導体が無いと車の量産もできなくなるということで経済が止まるので大変だよねというのが経済安全保障の骨子であるとも言えます。いままで何でそんなことに気づかずのんびりしてたのという話もあるわけですが、実はこれこそ中国様からある日突然レアアース(希土類;レアメタル)の禁輸をされたり、中国国内需要が上がったからと化学肥料やディーゼルエンジンの脱硫で使う尿素水(インブルー)などを止めやがるといきなり日本の経済活動は中国側の事情でマヒしてしまうという話が平然と起きます。サプライチェーンというのはそれだけ世界経済に組み込まれていて、日本もそういう取引が無くなると大変なことになるよねということで対策をしなければならない状態にあります。