注目ポイント
このシンボル画像は、編集部が画像生成AIのDALL·E 2(ダリツー)を使って作った Created with DALL·E
このため単一の法律では不十分で、EUもそれは認識しているという。「EUにはデジタル分野だけで約30本の法案がある。問うべきは既存の法律で規制できないのは何かということだ」
ミュラー氏も同意見だ。「私たちは現在、法規制のないところで行動しているわけではない。憲法や基本的権利保護を筆頭に、法律は既にある。問題は、AIが突きつけた課題の結果として生じた隙間をどう埋めるかだ」
だがその一方で「1つの法律で全てを解決するのは不可能」なこともはっきりしていると指摘する。「差別からの保護、基本的人権、著作権、競業法、行政法のほかにも、多くのさまざまな法律分野が関係する」
スイスの立ち位置は?
AI規制については現在多くの国で議論されている。だがスイスはEU非加盟国としてどう行動するべきか?スイスは欧州評議会の現議長国だ。当面はその協定に従うだろう。
この協定には米国、カナダ、日本、イスラエル、メキシコなども参加しており、その規制は広範囲に及ぶと言える。
「スイスはしばらく様子を見ながらさまざまな選択肢を検討している」とシュナイダー氏は言う。「スイスと同じスタンスを取る国は多い。どの国も、EUが生み出そうとしているものがうまくいくのかどうか観察している」。ただ、スイスがEU規制と全く違う方向に進むことはないだろうと同氏は考える。
同氏は、各国は今「待つだけでなく分析を行い、ほかの選択肢について熟考しているが、まだ決断を下していない、平常時にある。いったん動き出したら何年も何十年もかけて調整しなければならないプロセスだ」と指摘する。
欧州の足並みは?
スイスも、英国(ブレグジット以降)もEU非加盟だ。AIの規制に関し、欧州の足並みが揃わない事態は生じるだろうか?
「AlgorithmWatch CH」代表のミュラー氏は、EUは法律によって、少なくとも域内でそうした事態が起こらないようにするだろうと強調する。「ただ、EUが定めた規則は域外の企業が域内で製品を提供しようとする時にも適用可能だ」
スイスや英国の企業も影響を受けることが考えられると同氏は言う。産業界はおそらく、この分野での法的確実性を確保するため一定の政治的圧力をかけるからだ。
そこには責任の問題も生じる。AIが規則を破った場合、誰がその責任を負うのか?このテーマについては現在、米国の透明性に関する学術会議で議論されている。
ミュラー氏によれば、コンピューターが責任を取ることは絶対ない。責任能力がないからだ。「責任は常に、システムを開発するか特定の利害を持ってシステムを使用する人間にある。人間がこれからも責任を負う立場にいなければならない。それができなくなれば、法治国家の重要な前提の1つが排除されてしまう」