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中国の軍用機が台湾海峡の暗黙のラインである「中間線」を越え、台湾が「接続水域」と定める沿岸から24カイリ(約44キロ)近くまで接近したことが発表された。専門家は、「接続水域を突破する日は遠くない」と危機感を示し、衝突を避けるには米国の協力が必要だと訴えている。

(台北中央社)国防部(国防省)は先月24日、中国の軍用機が台湾海峡の暗黙のラインである「中間線」を越え、台湾が「接続水域」と定める沿岸から24カイリ(約44キロ)近くまで接近したと発表した。専門家は、中国のこれまでの手法から見れば「接続水域を突破する日は遠くない」と危機感を示し、衝突を避けるには米国の協力が必要だと訴えている。
台湾の政府系シンクタンク、国防安全研究院(国防院)の黄宗鼎副研究員は先月末、同シンクタンクの公式サイトで台湾海峡情勢に関する文章を発表した。
黄氏は、中国軍が2020年から21年にかけて、台湾の防空識別圏(ADIZ)への進入を繰り返すことでADIZの無効化を図り、22年以降は軍事演習などでADIZ内での活動範囲を広げたと言及。その上で、中国軍の接続水域への接近は「敵軍が城の下まで押し寄せている状態」だとした。
中国軍の活動範囲が従来より東に広がっており、台湾海峡の現状は著しく変化していると続けた黄氏。米国が効果のある軍事、外交的な行動を取ることで中国軍の活動範囲を台湾のADIZと中間線の東側以外の区域まで戻さなければ、台湾の軍が現有能力を最大限に発揮させても対応できる空間は圧縮され続け、「最終的に台湾は自衛権を行使せざるを得なくなる」との見解を示した。
黄氏は衝突を避けるには、まずは中国による台湾海峡の現状変更を止める必要があると主張。そのため米国は台湾海峡周辺での兵力を増強し、軍事的な勢力の均衡を図ることで中国軍による「ニューノーマル(新たな常態)」の確立を阻止するべきだと記した。
(黄雅詩/編集:楊千慧)