2023-07-03 政治・国際

中国、強化した改正「反スパイ法」を施行 外国企業のリスク拡大で「脱中国」加速か

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注目ポイント

中国でスパイ行為の取り締まりを強化する改正「反スパイ法」が1日に施行され、米情報機関は、中国で活動する米国など外国の企業や個人にとって拘束などのリスクが高まると強い懸念を表明した。スパイ行為の定義があいまいで「従来の事業活動が罰せられる可能性がある」としている。

中国でスパイ行為の取り締まりを強化する改正「反スパイ法」が1日に施行された。スパイ行為の定義が拡大され、「国家機密」に加え「国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料、物品」の提供や窃取なども違法行為となった。刑事責任を追及するほか、「犯罪を構成しない」場合でも、当局が判断すれば行政罰での拘束が可能となった。

米国防総省の情報機関「米国家防諜安全保障センター(NCSC)」は、同法のスパイ行為の定義があいまいで、中国で活動する米国など外国の企業、個人にとって拘束などのリスクが高まると警戒している。

反スパイ法は2014年に施行され、今回が初改正となった。今年4月26日に全国人民代表大会(全人代)常務委員会の会議で改正案が可決された。

ロイター通信によると、米国のバーンズ駐中国大使は、米政府が何らかの対抗措置を取る可能性に言及。国務省は先月末に更新した渡航情報で、「不当拘束の危険がある」として中国への渡航を再検討するよう米国民に勧告した。

中国は今年、米国のコンサルティング会社や監査法人などへの取り締まりも実施しており、改正反スパイ法の施行により、中国への海外投資家を動揺させていると米経済団体なども懸念を強めている。

NCSCは、中国はデータの海外流出を国家安全保障上のリスクとみなしており、外国企業が現地で採用する中国人社員に対し、中国の情報収集活動を支援するよう強制する可能性があると指摘。「中国在住の米企業や個人も、従来の事業活動を中国側がスパイ行為とみなしたり、対中制裁を支える行為だと判断すれば、罰則を受けることになる」と警告した。

改正「反スパイ法」で示されている定義があいまいなため、「あらゆる文書、データ、資料、物品」が中国の国家安全保障に関連するとみなされれば、ジャーナリストや学者、研究者も危険にさらされるという。実際、3月には北京でアステラス製薬の日本人男性幹部が改正前の同法違反容疑で拘束されたが、具体的な容疑内容は不明のままだ。

在米中国大使館の劉鵬宇(りゅう・ほうう)報道官は、「中国には国内法を通じて国家の安全を守る権利がある」とした上で、「中国は引き続きハイレベルの市場開放を推進し、米国を含む各国の企業に対し、より法律に基づいた国際的なビジネス環境を提供していく」と述べた。

習近平国家主席は2012年の就任以来、国家安全保障を強調してきた。米中対立が激化するにつれ、中国国内では米国とその同盟国に対する不信感が高まる一方で、中国政府は海外投資に門戸を開放しているとしている。

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