2023-07-02 政治・国際

天災の経験から学ぶ   台湾の台風と地震 

© 2021年、台湾は百年に一度の干ばつに見舞われ、日月潭にも雨が降らず、地面に亀裂が入った。

注目ポイント

台北MRT西門駅構内の壁には、巨大な「納莉台風淹水高度↑540cm」という文字と線が描かれている。2001年の台風16号で台北市が浸水した時の地下鉄構内の水位である。その時は台北のMRTは3ケ月にわたって運行を停止した。2009年の台風8号(Morakot)は台湾に甚大な土砂災害をもたらし、高雄の小林村は全村が埋没、全台湾で700人が亡くなった。1996年の台風9号(Herb)では50余名が死亡、中南部では海水が陸地に浸入し、阿里山道路は基礎部分が水に流された。1999年9月21日の台湾大地震では多くの家屋が倒壊し、2400人以上が犠牲になった。 これらは、この30年の間に台湾で最も多くの犠牲者を出した自然災害である。台湾は毎年、複数の台風と地震に見舞われており、人々は長年の経験から天災と共存する術を学んできた。台風や地震そのものから学んだ台湾の防災経験は、海外の参考にもなっている。

「長い経験が学習になります。台湾の台風管理は世界に誇れる経験です」と黄誌川は言う。政府は豊富な情報を提供し、対応措置においても完備した標準作業手順がある。被災した道路が再開通するまでのスピードは速く、地下鉄の出入り口は地面より高く設けるなど、これらの経験は海外も参考にしている。

2009年の台風8号は記録的な雨量をもたらし、高雄県甲仙郷(現在の高雄市甲仙区)の小林村全体が土石流に埋まってしまった。台湾の台風史上、最も悲惨な災害となったが、人々は悲しみを乗り越えて強く生きてきた。

 

一日平均100回の地震

台湾の人々を不安にさせるもう一つの天災は地震である。

気象局の統計によると、台湾では一日当たり平均100回の地震が発生しており、マグニチュード6以上の地震は年に平均2.8回発生する。気象局地震測報センター主任の陳国昌によると、大部分は人体が感じられないほどの無感地震だ。人が揺れを感じるのはマグニチュード3.5以上の震源地付近、あるいはマグニチュード4.5を超える場合だという。

1999年の台湾大地震はマグニチュード7.3で、台湾に歴史的な災難をもたらした。多くの住宅が倒壊して2400人以上が亡くなり、その揺れを体験した人々の心に傷を残した。昨年はマグニチュード6を超える地震が12回あり、1999年の大地震以来、最も多い一年だった。

気象局地震測報センターの観測システムは、地震発生後に観測ステーションから送信された地震波を受信して自動計算し、10秒以内に緊急警報を出す。

 

緊急地震速報

地震は人を精神的に緊張させるが、予知は可能なのだろうか。陳国昌によると、現在のところ地震予測技術はまだ成熟していないが、地震発生から数秒以内の警報は可能になっている。地震波から地震の範囲や揺れの程度などを自動計算し、破壊的な揺れが到達する前に警報を出すことで、生命や財産の安全を確保するのが目的だ。

2016年の美濃大地震で、台南の維冠ビルが倒壊したことをきっかけに、学界と気象局が共同で地震自動定位技術を開発した。これによって地震の規模や各地の震度分布などのデータを算出し、緊急速報を出す。現在のところ、マグニチュード5.0以上で、震度4以上が予想される場合、地震発生から10秒以内に通信業者のプラットフォームを通してスマホに「国家レベル警報」が送られる形になっている。陳国昌によると、自動定位システムの確度は6割以上である。2023年末にはアラート送信までの時間が10秒から7秒まで短縮できる見込みで、その後は5秒に挑戦していく。「5秒までの短縮に成功すれば、日本を超え、緊急地震速報が最も速く出せる国になるかも知れません」と言う。

昨年、学界では地震予知技術において大きな進展があった。中央大学地球科学科教授の顔宏元が率いる研究チームが、2013年から2018年のマグニチュード6以上の地震発生前の地電や地磁気、電離層などのデータを統合し、ビッグデータ分析を行なったところ、対応する異常信号が出ていることがわかり、地震の前兆分析に役立つと見られている。気象局では2024年に計画を提出し、さらに研究を深めていく予定だ。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい