2023-07-01 政治・国際

カナダ政府 中国主導のAIIBの取引停止 脱退の可能性も示唆AIIBカナダ人幹部「AIIBは中国共産党に支配され有害な文化を持っている」と批判

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注目ポイント

ピカード氏は今年3月に国際広報責任者に就任した。英国のフィナンシャル・タイムズ紙によると、ピカード氏は「中国共産党はAIIB内部の目に見えない政府のようなものだ。私はそれに参加したくない」、「私は利用される愚か者になりたくはないのだ」と述べた


中国とカナダの関係が再び緊迫している。中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB、以下AIIB)のカナダ人幹部が辞任し、AIIBが中国共産党に支配されていると非難したことを受け、カナダ政府は6月14日、AIIBとの取引を停止し、同行への中国共産党の影響力を調査すると発表した。調査の結果によっては脱退する可能性もあることを示唆している。

AIIBは日米が主導するADB=アジア開発銀行などに対抗する形で、2016年に中国の習近平国家主席によって設立された。アジアの新興国・地域の政府に対し、インフラ開発のための融資を行うことを目的とした国際開発金融機関で、2023年6月時点で世界92カ国・地域が加盟している。

カナダはジャスティン・トルドー政権下の2018年にAIIBに加盟し、同行に2億ドル(約280億円)の払い込み資本(Paid-in capital)を提供しているが、野党は、AIIBは中国政府が覇権主義を太平洋に進出させるツールであるとして、撤退を求め続けている。

6月14日、AIIBの国際広報責任者であったカナダ人のボブ・ピカード氏が辞任し、ツイッター上で「愛国的なカナダ人として、これが私の唯一の責任だ」として、衝撃的な告発を行った。「AIIBは中国共産党に支配され、想像し得る限り『最も有害な文化』の一つを持っている。AIIB加盟がカナダの国益に資するとは考えられない」とAIIBを批判した。

ピカード氏は今年3月に国際広報責任者に就任した。英国のフィナンシャル・タイムズ紙によると、ピカード氏は「中国共産党はAIIB内部の目に見えない政府のようなものだ。私はそれに参加したくない」、「私は利用される愚か者になりたくはないのだ」と述べ、公に中国共産党を批判した自身の安全を守るため、辞任届を提出してから数時間後には中国から出国したという

またフランス通信社の報道によると、ピカード氏は中国を出国して、ツイッターで辞任と告発を発表するのを待つ間、2018年にカナダの元外交官マイケル・コブリグ氏と企業家のマイケル・スパパ氏が中国当局に突然身柄を拘束された事件のことを思い出さずにはいられなかった。(両氏は2021年に中国を出国)、辞任届を提出後、すぐに空港に向かい出国したため、多くの私物は持ち出すことが出来なかったという。

ピカード氏の辞任と告発に対し、カナダ政府は直ちに反応し、クリスティア・フリーランド副首相兼財務相は同日、カナダ政府がAIIBにおけるカナダ政府主導の取引を即時停止し、AIIBをめぐる疑惑とカナダの関与について調査すると発表した。「調査の結果によって、いかなるフォローアップ行動も排除しない」と述べ、カナダがAIIBから脱退する可能性も示唆した。

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