2023-06-30 政治・国際

香港国家安全維持法が施行されて丸3年「中国化」進み、海外移住の流れ止まらず

© Photo Credit: GettyImages 香港 返還記念日の準備

注目ポイント

香港で民主派排除や反政府活動の取り締まりを目的とした香港国家安全維持法(国安法)が施行されて30日で丸3年となった。デモが抑え込まれただけでなく、政党や民主派団体が解散に追い込まれ「香港の中国化」が日々強まっている。

中国政府による民主派排除や反政府活動の取り締まりを目的とした香港国家安全維持法(国安法)が施行されて30日で丸3年を迎えた。

2019年~20年にかけ、最大200万人(主催者発表)の住民が同法案に反対して抗議デモを繰り広げ、香港の中心部では幾度も警察当局との大規模な衝突が起きた。

時を同じくして発生した新型コロナウイルスの感染拡大。香港当局は20年3月に公共の場所で5人以上が集まることを禁止したため、事実上、抗議集会やデモは行えなくなり、可決した国安法は同年3月30日に施行された。デモが抑え込まれただけでなく、政党や民主派団体が解散に追い込まれ「香港の中国化」が日々強まっている。

国安法などの適用範囲は拡大され、民主派抑圧の動きは継続。海外移住の流れが止まらず、少子高齢化も相まって労働力不足に直面し、当局は中国からの労働者受け入れ強化にかじを切った。

3月時点で、国家安全に危害を与える活動に関わったとして計243人が逮捕され、うち約140人が同法違反罪などで起訴された。

3月には日本留学中の香港人がインターネットで行った香港独立などの言論が理由で、帰省後に国安法の国家分裂扇動容疑で逮捕された。起訴は刑事罪行条例違反罪が適用されたが、同罪は海外での行為にも適用できるとの規定はなく、専門家からは「以前はこうした適用はなかった。乱用だ」との指摘が上がる。

5月のメーデーに、労働団体が民主化運動とは無関係のデモの申請をしたが、警察の圧力で取り下げられた。

そんな中、香港のプラットフォーム運営会社・和富社会企業が東華大学看護学校と共同で香港市民を対象に幸福度調査を実施した。その結果、幸福度の総合スコアは0から最高10のスケールで6.57だった。これは昨年の6.98、一昨年の7.26から下がり続け、国安法の施行以来最低となった。また、回答者の約17%が家族は不幸だと答えており、昨年の2倍になった。調査は4月3~17日にオンラインで約1300人を対象に行われた。

一方、カナダCBCニュースは「明確な恐怖 北京の統制強化から3年で香港人は声をひそめる」との見出しで、香港の住民が国家安全維持法で強まる「中国化」を追った。

CBCニュースは「北京の指導力を称賛する赤い横断幕と、息を飲むような演説。警察を賛美する音楽。武道着を着た笑顔の若者たちが集まるイベントが香港の街中で開催されていた」とリポート。これは中国共産党により脚色された国安法施行を記念する式典だった。「これがもし中国本土のどこかだとしたら、二度見はしなかっただろう」とし、3年前とは一変した街の様子を伝えた。

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