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米国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官は今週、ロシアの民間軍事会社ワグネルによる武装反乱が「中国の指導部を動揺させている」との見方を示した。事実、ロシアの外務次官が25日、急きょ訪中し、事情を説明したとみられるが、中国側は「ロシアの国内問題」とし、プーチン政権支持を改めて表明した。
米ワシントンで開催された米シンクタンク「戦略国際問題研究所フォーラム」で、米国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官は26日、「最近のロシア情勢は中国指導部を動揺させたと言っても過言ではない」と述べた。それ以上は言及しなかったが、今回の反乱が中露関係にもたらす影響を米政府が注視していることを示した。
豪ABCニュースは27日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」トップのプリゴジン氏による反乱が失敗に終わり、ワグネルの戦闘員たちが基地に戻る中、「ロシアの外務次官は北京で中国の外務次官らとの会談で多忙を極めていた」と伝えた。
ところが、2回の公式会談後に発表されたプレスリリースはわずか1行で、〝プリゴジンの乱〟については触れなかった。声明は「秦剛外相は北京でロシアのルデンコ外務次官と会談し、中露関係や共通の関心事である国際・地域問題について意見交換した」とだけ記した。
ABCは「この会談が計画されたものか、それとも北京とモスクワが直前に取り決めたものかは不明」とし、非公開会合に関する追加情報は公表されていないと伝えた。
中国はロシアによるウクライナ侵攻をめぐって「中立」を標ぼうしているが、対露制裁に反対するなど「ロシア寄り」の動きが目立つ。一方で、和平交渉の「仲介役」として関与する姿勢を示しており、今回の反乱が戦況に与える影響を注視しているとみられる。
香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは、ロシアが中国にとって最も強力な同盟国の一つだが、ウクライナ侵攻により、中国政府は微妙な立場に置かれていると説明。中国は外交・経済面でロシアとの「制限のないパートナーシップ」を支持してきたものの、欧米などから二次制裁を招くことを懸念し、大規模な軍事支援の提供を避けてきたと解説した。
中国政府は反乱への公式見解を示していなかったが、25日夜、外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は、〝プリゴジンの乱〟は「ロシアの国内問題」だとした上で、「中国はロシアの国家安定の維持と発展を支持している」とし、プーチン政権への支持を改めて表明した。
一方、武装反乱で活動を一時停止していたロシアの民間軍事会社ワグネルは27日までに国内各地で戦闘員募集の活動を再開した。プーチン大統領は26日の演説で、ワグネル戦闘員は国防省と契約し任務が可能と発言。契約した戦闘員を軍が吸収するのか、軍の統制下でワグネルを存続させるかなどは明言しなかったが、今後もロシアでの活動が続く可能性がある。