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ロシアで武装反乱を起こした露民間軍事会社ワグネル・グループの創設者プリゴジン氏は24日、首都モスクワへの進軍停止を表明したことで、懸念されたワグネル部隊とロシア軍がモスクワで衝突する事態が回避された。これによりプリゴジン氏について、武装反乱を呼びかけた容疑での捜査が取り下げられ、ベラルーシに出国することをロシア政府が明らかにした。
ロシア本国で武装反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏は24日夜(日本時間25日未明)、首都モスクワへの進軍を停止し、ロシア軍との衝突回避に向けての緊張緩和策で、プーチン大統領と電話会談し合意した。懸念されていたワグネル部隊とロシア軍のモスクワでの流血は避けられた。ベラルーシのルカシェンコ大統領は事態打開のために仲介役を担ったと強調した。
ロシアのペスコフ大統領報道官はプリゴジン氏について、武装反乱を呼びかけた容疑での捜査を打ち切り、隣国ベラルーシに出国すると明らかにした。事実上の亡命とみられる。ただ、プリゴジン氏の所在は不明で、各国が動向を注視している。
これに先立ちプリゴジン氏は、通信アプリへの投稿で「ロシア人の血が流れることに対する責任を自覚し、部隊を方向転換させている」とした。ペスコフ報道官によると、ワグネルの戦闘員も刑事責任には問われないという。ロイター通信によると、ワグネル部隊は制圧していたロシア南部ロストフ州にある南部軍管区司令部から撤収した。
プリゴジン氏は23日から24日にかけ、ウクライナ侵攻に参加するワグネル部隊をロシア軍が攻撃したと訴え、戦闘員と共にロシア軍の南部軍管区司令部に入った。ワグネルは隣接するボロネジ州に移動したとみられ、米紙ニューヨーク・タイムズは軍と衝突したと報じた。英BBC放送は、ワグネルが同州の州都ボロネジの全ての軍施設を制圧したと伝えた。
これに対しプーチン氏は24日、緊急にテレビ演説し、「武装反乱だ」と非難し、「裏切りと反逆に直面した」と強調。軍に対して武器を取った者は罰せられると警告し、危機感を示した。
だが、米紙ワシントン・ポストは24日、プーチン大統領は「奈落の底をのぞき見し、見て見ないふりをした」と論評。プリゴジン氏の「武装反乱」に対して制裁することを誓いながら、プリゴジン氏の事実上の亡命を認めることで〝手打ち〟したというのだ。
同紙は、「プーチン大統領の撤回の早さは、アナリストたちが思っていたよりも、プーチン氏がぜい弱だった可能性を示唆している」とし、今回の対応により「プーチン氏は自身の政権を守ったかもしれないが、大国としてのロシアの崩壊の一環として記憶され、プーチン氏の遺産となるだろう」と報じた。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は25日、ワグネルの反乱を受けてバイデン米大統領と電話会談した。ロシアへの反転攻勢加速へ支援強化を求めたとみられる。